化粧品に配合する新規成分の効果・効能を、認めてもらうのは大変なことだ。予防・改善効果をはっきりと謳うことができる「医薬部外品」相当の認可を得るには、それこそ長い年月をかけた膨大なエビデンスと根気を必要とする。だが、たゆまぬ努力と実績で、有効成分を2つも独自に開発したメーカーがある。香川県にある老舗の造り酒屋、勇心酒造だ。日本人が慣れ親しんだ「米」を原料に、本当の意味でホリスティックな、驚きのオリジナル成分を生み出した背景を探る。

米×発酵技術が生んだ、唯一無二の機能性素材。

香川県綾歌郡綾川町。山に囲まれた盆地は、酒造りに適した、米所であり水所である。

「お墨付き」が生まれた現場を見たくて、高松に飛んだ。空港から車を走らせること30分、本社を構える綾川町に至るまでには、穏やかな、いわゆる日本の田舎の風景が広がる。そしてよく見ると、四方をぐるりと山に囲まれた見事な盆地だ。

 勇心酒造は江戸時代の安政元年から続く、歴史ある日本酒の造り手。現在も同じ香川県にある契約農家の減農薬山田錦で、繊細な味わいの純米吟醸を生産している。ところが、その日本酒が全体の売り上げに占める割合は、なんとたったの0.5%なのだそう。いまや事業の中心は、独自開発の有効成分、ライスパワー®エキスをフルに生かしたオリジナルのスキンケア製品、OEM*1化粧品の製造販売だという。

 酒造メーカー発といっても、ただ単純に日本酒や日本酒の成分を配合したコスメ、というわけではない。搭載されているのは、日本酒を造る際に培われた発酵技術だ。新規機能性素材ライスパワー®エキスとは、その名が示す通り、日本酒の原料である米の力を信じて40年以上にわたる研究開発を経て得た特別なエキスたち。現在は、医薬部外品有効成分として認められている「皮膚水分保持能改善」のNo.11、「皮脂分泌抑制」のNo.6をはじめとする13種のライスパワー®エキスが実用化に至っており、薬用入浴液や薬用化粧品、さらには食品などに配合されている。

その場しのぎでない、肌を「育てる」スキンケア。

人間の生体機能のひとつ「水分保持能」は、肌のバリア機能を保つために大切なセラミドなどの細胞間脂質を生産し、肌の健康を守る役割をはたす。ただし、水分保持能は加齢やダメージなどで容易に低下。結果、肌はよりダメージを受けやすくなり、ハリや弾力も失ってしまう。ライスパワー®No.11には、表皮角化細胞にはたらきかけて肌がセラミドなどを生み出す力を高め、皮膚水分保持能を「改善」する効果がある。
一般的なスキンケアの効果は主に「保湿剤」が担うが、その保湿効果は一時的なものであることがほとんど。対する「皮膚水分保持能の改善効果」を持つライスパワー®No.11は、表皮そのものにはたらきかけ、健康な角化細胞をつくり、肌内部から潤い続ける状態に導く。

 工場見学を終え、真新しい社屋で常務取締役/農学博士の徳山孝仁さんにあらためてお話を伺った。

「米は凄いんです。日本人が大昔から主食にしてきただけあって、米には人に生来備わる“自ら健康になろうとする力”を高めるパワーが秘められています。そこに発酵という、これまた日本人が長く受け継いできた職人業、さらには最先端のバイオ技術を掛け合わせると、これまでにないものができる。我々は、そんな天然物が生み出すはかり知れない可能性を信じて、ときに先祖代々の田畑、山まで売りながら研究開発を続けてきました。その結果得られたのが、特別な効果効能を持つライスパワー®エキスの数々です」

 勇心酒造を一躍有名にしたのは、1988年発売の薬用入浴液だ。ライスパワー®エキス第一号のライスパワー®No.1-Dを配合したマイルドな液状の入浴液は、当時、社会問題となり始めていた多くのアトピー性皮膚炎に悩む人々を救いたいという思いから開発された。

 2001年に「皮膚水分保持能改善」が認められたライスパワー®No.11も、その思いの本質は同様で、健康な角化細胞をつくり、肌本来の力を発揮させること。徳山常務はこうも語る。

「たとえば、アトピー症状をステロイドで抑えても、それは本当の意味での“治った”とは違い、その場しのぎにすぎません。壊れているのはあくまで肌の、ひいては体全体のバランスであり、それらを根底から治す努力をしなければ、永久に症状との追いかけっこです。西洋医学的な対症療法の問題点はまさにそこで、与えたり、補ったりするのではなく、まず肌自体を育む必要がある。思えばアトピー症状に限らず、くすみやハリのなさなどの肌の悩みの原因は実はすべて一緒で、本来の自分の肌の力を取り戻すことで解消されます。細胞が元気になればハリが出るし、角質が健康であればキメが整って透明感も出てくる。ちゃんとした肌をつくる、まずはそれをなさなければ始まらないと思うのです」