さぬきオリーブ酵母が爽やかな「金陵 瀬戸内オリーブ純米吟醸」

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「金陵 瀬戸内オリーブ純米吟醸」720ml ¥1,500

 今年4月、香川県の4つの酒蔵から「さぬきオリーブ酵母」を使用した新酒がお披露目された。その始まりは2015年。香川県酒造組合が、県花・県木であるオリーブから酵母を採取し、香川県特産の清酒を醸造することを考案。2018年には、発酵食品研究所との共同研究で、瀬戸内の温暖な気候で育った小豆島のオリーブの果実から清酒造りに適した酵母を発見し、試験醸造に取り組んだ。そして小豆島酒造、西野金陵、綾菊酒造、川鶴酒造が揃って「さぬきオリーブ酵母」を使った日本酒を完成。同じ酵母ながら、全く違う個性ある仕上がりとなっている。

 その中から今回紹介するのは、西野金陵による香川県産の酒米「さぬきよいまい」を使用した「金陵 瀬戸内オリーブ純米吟醸」。青々としたオリーブ由来の天然酵母で、若いマスカットを思わせる爽やかな甘味と酸味が特徴的。県産の酵母、米、水、とオール香川で醸した日本酒は、香川県によるオリーブ牛、オリーブ夢豚、オリーブハマチといった特産物との相性のよさはもちろんのこと、様々なジャンルの料理とのペアリングも楽しめそうだ。オリーブの実と葉をシンプルにデザインしたラベルは、ギフトにもぴったり。


西野金陵
香川県仲多度郡琴平町623
TEL:0877-73-4133
https://www.nishino-kinryo.co.jp/

日本酒造りに欠かせない「酵母」の新潮流とは

 日本酒だけでなく、味噌や醤油、パン、チーズなどの発酵食品の製造工程でも必要となる「酵母」。日本酒造りにおいて清酒酵母は、主にアルコール発酵と香りの素という2つの働きを担っている。だから、どの酵母を選ぶかが、完成した日本酒の香味を大きく左右するのだ。

 多くの種類が存在するが、日本醸造協会が頒布している「きょうかい酵母(協会系酵母)」と、工業技術センターや醸造試験所などの地方自治体の試験研究機関で開発された酵母、花酵母に代表される大学で開発された酵母、各蔵に自生する「蔵付き酵母」などに大きくは区分される。

 今回紹介した「協会7号酵母」は、「きょうかい酵母」のひとつ。現代の清酒造りで最も広く使用されているといわれる。同様に代表的なものとして挙げられるのが、「協会6号酵母」や「協会9号酵母」だ。6号酵母は、通称「新政(あらまさ)酵母」と呼ばれ、1930年に秋田県の新政酒造から分離されたもので、現在も使用されている酵母としては最古のもの。発酵力が強くオレンジのような華やかな香りが特色とされている。9号酵母は、通称「熊本酵母」、「香露酵母」とも呼ばれ、1953年頃、「香露」などを製造する熊本県酒造研究所で分離された。酸は少なく香気が高いので吟醸酒に向いている。

 ちなみに、今回ワイン酵母で醸した日本酒を紹介したが、その逆の清酒酵母で醸したワインも存在する。昨年リリースされた「ぎんの雫 Goutte D’Argent」は、協会7号酵母を使用したチリ産の白ワイン。コンセプトに共感した山口県の旭酒造から酵母を譲り受けて誕生した。垣根を越えた試みによって、日本酒とワイン、それぞれの魅力が深まっている。

 今年4月に商品化された「さぬきオリーブ酵母」は、地方自治体によるもの。県ごとに日本酒をアピールする際、それぞれの県特有の酒米や酵母は非常に有効なものとなる。日本酒造りに欠かせない、米、酵母、水、すべてを県産で統一すれば、「オール香川産」などと謳うことができるからだ。

 酵母というと、少しマニアックな印象を受けるかもしれないが、日本酒の個性を決めるのに非常に大きな役割を担っている大切な存在。覚えておくと、味わいをイメージするのに役立つだろう。

外川ゆい
外川ゆい フードジャーナリスト。1980年生まれ。グルメ誌やライフスタイル誌を中心に、レストラン、ホテル、お酒など、食にまつわる記事を幅広く執筆する。なかでも日本酒をこよなく愛し、蔵元とお酒を交わす時間がなによりの至福。相手への敬意を込め、常日頃から和装。

Photos:sono(bean) Text:Yui Togawa Edit:Mizuho Yonekawa

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