新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が世界で猛威を振るう中、自分や大切な人の命について考え直した人は多いのではないだろうか。一般社団法人 手紙寺が提供する「手紙箱」は、自分の死後、残した人へのメッセージを託せるサービスだ。手紙を通して死や大切な人と向き合う意味について、手紙寺理事で江戸川区にある證大寺住職の井上城治さんに聞いた。

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自分の死後、残した人に思いを届けてくれる「手紙箱」

 もし大切な人と死に別れることになったら、どんな言葉を残したいだろうか? 自分の死後、その言葉を届けてくれるサービスがある。東京都中央区の「手紙寺GINZA」をはじめ、関東に4カ所ある手紙寺が提供している「手紙箱」だ。

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手紙箱(¥12,000) 155mm×220mm×40mmの大きさの箱に、便せん、封筒、説明書などが入っている。

 手紙箱は、分厚い単行本を思わせるサイズ。大切な人へのメッセージや思い出の品などを入れた後、手紙寺に納めると、封印をして保存される。手紙は何度でも書き換えることができ、収める品の見直しも可能。毎年末、利用者のもとに「お預かりしていますよ」というお知らせが来る仕組みになっている。「万が一の際は、手紙寺が責任をもって手紙箱を託したい人へ届けます」と手紙寺理事の井上城治住職。

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「手紙には、ときどきの思いが残るもの。書き直す際は、以前の手紙を捨てずにためていってほしいとお願いしています」(井上住職)

 パートナーや子ども、両親などのほか、友人、過去のパートナーに向けて、手紙箱を残すケースもあるそうだ。井上住職は、「遺言書と異なり、手紙箱は思いを残すためのもの。送る相手以外は見られないので、心の内を余すことなく書き記してください」と話す。

「実際に死ぬ間際には、自分の気持ちをすべて伝えることはできない。きちんと書き残しておくことは、自分のためでもあると思います」(井上住職)

 井上住職が手紙箱を考案したきっかけは、自身の体験にある。父の後を継いで6年目、29歳のときのこと。寺の経営に行き詰まっていた井上住職は、亡き父がかつて残してくれた手紙を発見したという。

「『後継に告ぐ 證大寺の念仏の灯を絶やすな』。たったそれだけのメッセージでしたが、何よりの応援の言葉になりました。自分は一人ではないと勇気が湧き、前を向くことができたんです」(井上住職)

 故人からの手紙は、残された人に力を与えるのだ。井上住職は、今でもたびたび対話をするように父の手紙を見返すのだという。