健康でいたい、若々しくありたい、と思うとき、ふと目にとまるさまざまな情報。「コレさえやれば(やめれば)」とか、「……の正解・不正解」とか、気になるフレーズで私たちの心をつかんでくる。でも、どこまで信じていい? すべて〇か×かで割り切れるのだろうか? 今回は腸についての「善悪二元論」の虚実に迫る。

「2つに分ける」とわかりやすいが、弊害も。

「言葉」のせい!? 本来の理解を離れてしまう、もったいない例。
私たちはしばしば、「優性/劣性」や「善玉/悪玉」といった二元論的な言葉で、ものごとを単純に理解しようとする。でも実際の世界は、そんなにすっぱり分割できるものではない。二元論的なものの見方にとらわれていると、どちらともいえない中間的なものごとや、変化に富んだ多様性の豊かさが、見えなくなってしまう。

 腸の中には、体によい影響を与える菌=「善玉菌」と、悪さをする菌=「悪玉菌」がすみ着いている。善玉菌を増やし、悪玉菌を減らすことが健康維持の要……というお話が広く知られるようになったのは、20年以上前のこと。当時は、腸内細菌叢の全体像を捉える技術がまだ確立しておらず、検出できた一部の菌の動向を頼りに、腸と健康の関係を推測していた(そもそも「一部の菌しか検出できていない」とわかったのも、ずっと後のことだ)。

 その後、遺伝子検出技術とビッグデータ解析手法が飛躍的に進歩。いま現在の腸内細菌学は、20年前とは比較にならないほど大量の情報を収集・分析する。そんなやり方を通して浮かび上がってきた腸内細菌叢の実態は、「善玉菌」「悪玉菌」という素朴な二元論とは、かけ離れたものだったのである。