理論物理学の博士号をもち、有名進学予備校で数学の講師を務める一方、自ら主宰するソムリエスクールで教鞭を執るほか、飲食店経営やワインと日本酒の輸出入業も行うなど、ユニークかつパワフルに活動するワイン研究家、杉山明日香さん。本連載では、彼女が毎月視察に訪れるというシャンパーニュ地方の新潮流にフォーカス。

ブドウの収穫作業は「音楽を聴きながら、楽しく!」がコツ

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シャンパーニュ・ロジェ・クーロンの外観。

 みなさん、こんにちは。「杉山明日香のシャンパーニュ紀行」第11回は、シャンパーニュの中心であるランスから西へ車で20分ほど、モンターニュ・ド・ランス地区のヴリニィ村にある「ロジェ・クーロン」をご案内します。

 ロジェ・クーロンはシャンパーニュにおける老舗のレコルタン・マニピュランで、つまりブドウの栽培からワインの醸造までを行う生産者なのですが、その歴史は1806年まで遡ります。現在の当主はエリック・クーロンさんとイザベルさんご夫妻。歴史あるシャンパ―ニュ・メゾンについて、エリックさんに詳しく伺いました。

明日香:(ドメーヌのサロンにて)さっそくなのですが、あそこにあるお祭りの山車(だし)のようなものは何でしょうか?

エリック:このあたりの各村で行われている「サン・ヴァンサン」というワインの神様を讃えるお祭りで、年に1回、ワインの造り手たちがこの山車を引いて村中を回ります。毎年このお祭りで、村の若い造り手ナンバーワンが選ばれるんですが、選ばれた若者がいるドメーヌでこの神様を1年間、次の年のお祭りまでお預かりするんです。今年は息子のエドガールが、ヴリニィ村の造り手ナンバーワンに選ばれたので、うちでお預かりしています!

明日香:おめでとうございます! ワインの神様を讃えるなんて、素晴らしいお祭りですね! 主旨は違いますが、私の地元の唐津にも町ごとに異なる山車を引く大きなお祭りがあるので、親近感がわきます!

エリック:明日香さんの地元の山車も美しいのでしょうね。ぜひ一度見てみたいですね。

明日香:ぜひ、いらしてください! と、いきなりお祭りの話になってしまいましたが(笑)、まずはエリックさんがシャンパーニュ造りに携わるまでのお話を聞かせてください。

エリック:わが家は1806年から代々ブドウ栽培を行っていて、私が8代目、息子と娘の世代が9代目になります。シャンパーニュでも古いほうでしょうね。 私の母は今もここに住んでいて、私自身もこの家で過ごしたのですが、幼い頃から全寮制の学校に入っていたので、比較的早くに家を出ました。15歳のときに父が亡くなり、その年にアヴィーズにあるワインの専門学校に行くことを自分で決めました。畑の仕事を始めたのは、学校を卒業した17歳のときからです。

明日香:メゾンを継ごうと思ったのは、学校を出たときでしょうか?