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尿、血液、唾液などの体液を使ってがんの検査を行う「リキッドバイオプシー」が、世界的に注目をあつめている。「N-NOSE®」(エヌノーズ)は、その数少ない実用例のひとつだ。尿を使い、15種類のがんリスクを検査でき、価格も1万円程度とリーズナブル。一番の特徴は、早期がんの検知に長けている点だ。痛みをともわないがん検査のいまについて、N-NOSE の開発元であるHIROTSUバイオサイエンスに聞いた。

生物の力を借り、早期がんを高精度に検知

 日本人のもっとも多い死因とされるがん。生涯罹患リスクは男性が63.3%、女性が48.4%だが、20代から50代に限れば患者数は女性が男性を上回る。 女性の場合、働き盛りはすでにがんがすぐそこにある世代なのだ。

 とはいえ、がん検査は私たちにあまり身近なものではない。その一因は、時間がとられ費用がかさむうえ、心身の負担も大きいことだろう。

 そんなイメージを覆すのが、2020年1月に実用化された「N-NOSE®」だ。体液を用いたがん検査の数少ない実用例のひとつで、用いるのはたった1滴の尿だけ。検査費用も1回1万円程度と安価だ。

 検知できるのは、胃がん、大腸がん、肺がん、乳がん、子宮がん、膵臓がん、肝臓がん、前立腺がん、食道がん、卵巣がん、胆管がん、胆のうがん、膀胱がん、腎臓がん、口腔・咽頭がんの15種類。がんの種類を特定するものではなく、がんリスクがわかる1次スクリーニング検査の位置づけとなっている。

 N-NOSEの最も大きな特徴は、早期がんの検知率の高さ。ステージ0~1のがんでも、85%の精度で検知できるという。

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線虫ががん患者の尿の匂いを嗅ぎ分ける様子。N-NOSEは、世界で初めての生物診断技術だ。

 早期がんでも高精度に検知できる秘密は、検査に使う「線虫」の嗅覚の鋭さにある。線虫とは、体長約1mmの小さな多細胞生物で、土壌中に生息することが多く、目や耳を持たない。その分、嗅覚が発達しており、好きな匂いに近づき、嫌いな匂いから遠ざかる習性をもつ。N-NOSEの検査では、線虫が健常者の尿の匂いを嫌い、がん患者に特有の尿の匂いを好むことを利用し、がんリスクを検知している。

「線虫の嗅覚受容体数は犬の1.5倍、人の3倍ともいわれ、機械では測ることのできない微細な匂いを嗅ぎ分けることができます」(N-NOSE開発元のHIROTSUバイオサイエンス広報・永溝はるかさん)

女性に身近な膵臓がん、卵巣がんも早期発見可能

 N-NOSEは、早期発見が難しいとされる膵臓がんや卵巣がんも早期発見ができる。この2つは、女性にとって関係の深いがんだ。

 膵臓がんは、男女ともに死亡率の高いがん上位5位に入っているが、とくに女性の場合、大腸がん、肺がん、結腸がんに続き4番目に多い。また、卵巣がんは、いわずもがな女性特有のがんで、やはり死亡率が高い。卵巣がん、子宮がん、乳がんは、40歳代の発症例が多いのも特徴だ。

「がんは早期発見が重要です。早期であればあるほど生存率は高いので、ステージ0や1で見つけることができれば助かる命も増えるはず。治療費も心身のダメージも、少なくて済むのではないかと思います」(永溝さん)

 現在、N-NOSEは全国の8施設で受けられる。指定のクリニックなどで尿を採り、2週間から1カ月後には「がんリスクの程度」として結果が出る。年齢に制限はなく、小児がんについても臨床研究を行っている。

「がんリスクが高かった方には、まず五大がん検診を受けたうえで、医師へ相談されることを推奨しています。がんリスクが低かった場合も、1年ごとの定期的な検査をお勧めしています」(永溝さん)

 N-NOSEは簡易に安価に、かつ全身網羅的に検査できることが特徴。がん検診に行くのを躊躇する人たちの背中を押したいと考えている。

「N-NOSEは尿を採るだけの検査なので、体に内視鏡を入れたり、慣れない薬を飲んだりする半日がかりの検査と比べると、かなり気軽に受けられます。万が一に備え、がんの1次スクリーニング検査として、気軽に利用してほしいです」(永溝さん)

 2022年には膵臓がんの特定を目指して研究を進行中。また2027年には国内のみならず世界の8億人に普及することを目指し、海外展開も積極的に行う。広津崇亮代表取締役は、「外出の難しい状況になり、自宅での受診ができるように研究開発を進めていきたい」としている。

 多忙な日々を送っていると、つい自分のことを後回しにしがちだ。しかし、豊かな人生は自身の健康あってこそ。意識的に立ち止まり、体のSOSを聞きのがさないようにするのも大切だ。

HIROTSUバイオサイエンス
生物学の研究者として20年以上、線虫の研究をしてきた広津崇亮氏が、2016年に設立。線虫を利用したがん検査「N-NOSE®」により、がんを早期発見できる世界をつくることをミッションとしている。
http://エヌノーズ.com/

Text:Yue Arima Edit:Ayaha Yaguchi

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