最新作『返還交渉人 いつか、沖縄を取り戻す』を含め、今年公開された映画は主演作だけで3本。そうした映画での活躍に加え、近年では連続ドラマの出演でも注目を集める俳優・井浦新。話題を呼んだドラマ「アンナチュラル」をはじめ、幅広い女性層からの支持を得るのは、幅のある演技と独特のたたずまい、そして常に共演のヒロインを輝かせる俳優としての包容力にある。そんな彼が、ともに働く女性に向ける視線とは?

権力に立ち向かった実在の外交官役に、心を動かされた

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──最新作『返還交渉人 いつか、沖縄を取り戻す』では、沖縄の本土復帰に尽力した外交官・千葉一夫さんを演じています。社会的な作品への出演も多い、井浦さんらしい作品選びですね。

「僕らしい」と言っていただけるのは嬉しいです。でもこの作品は意図して選んだわけではなく、柳川強監督とのご縁でいただいたものなんです。柳川さんは戦争を語る映像作品をこだわって撮られている監督で、そうした作品のひとつが僕のテレビドラマデビュー作(NHKスペシャル「最後の戦犯」)だったんです。その後も「コントレール 罪と恋」(石田ゆり子共演)という作品でご一緒して……。

──あのラブストーリーが、この作品と同じ監督の作品なんですか?

 そうなんです。僕も男性を撮っていらっしゃるイメージしかなかったし、ご自身もラブストーリー初挑戦だったらしく、「女性なんて撮れるんですか?」と聞いたら、「何言ってんだ、撮れるよ!」と(笑)。そういう経緯で、この作品でも声をかけて下さいました。

──演じられた外交官・千葉一夫さんについて、どんなふうに感じましたか?

 最初に監督から「政府を敵に回してまで沖縄の側に立ち、闘った外交官がいる」と伺ったときは、「そんな人がいるなんて信じられない」という感じで。というのも今の日本の政治においては、発言から行動からすべてにおいて残念なことだらけ、うんざりすることばかり起きているじゃないですか。ですから資料を読んでそれが事実と知ったときは驚きましたし、すごく心が動かされました。千葉さんの存在に本当に救われた気持ちになり、二つ返事で「ぜひ僕にやらせてください」と。ただ、これは簡単に演じられる役ではないなあ……とも思いましたが。

──というのは?

 戦後という時代は、戦争ですべてがゼロになった時代です。そんななかで日本の土台をつくりあげていった人物って、能力はもちろん人間的な器においても桁違いで。言ってみれば千葉さんは、今の時代には絶滅してしまった「昭和の豪傑」なんです。そういう役に説得力を持たせるには、今の自分では心も身体も追いついていないなと。あとはセリフの中に大量にあった「クイーンズイングリッシュ」ですね。「アメリカ人が舌を巻く英語を話す日本人」……ってト書きも、ぜんぜん想像がつかない(笑)。でも、とにかくやれることをすべてやっていくしかないという感じで。資料を熟読して、英語のトレーニングをして、身体を“ぶっとく”して……すべてを同時進行でやっていきました。

──映像を見ても、井浦さんの身体が大きくなっているのがすごくわかりました。

 そういう人物を演じるうえでは、身体的に大きいことは大事だなと。撮影前はとにかく食べて食べて、運動して運動して。身体をシェイプするということではなく、内側から筋肉をつけて、ぶっとくしていく。それこそ1日何食も、食べられるだけ食べました。