ビエンナーレの主会場は、国立公園内のジャルディーニと、12世紀から造船所や武器庫として使われてきた歴史的建造物アルセナーレの2カ所。芸術監督に就任したNY生まれのキュレーター、ラルフ・ルゴフは、企画展の参加作家たちがこの2会場でそれぞれ異なる作品を展示する構成を試みた。前者は美術館のようなホワイトキューブの空間、後者は中世の遺構そのままのラフな空間。これら対照的な舞台が各作家の表現や主題を際立たせ、鑑賞者は違う角度から作品世界への理解を深めることができる。

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リトアニア館 展示風景

 今回、プレビュー期間中、既に最有力との噂が広まっていたリトアニア館が、国別部門の金獅子賞を受賞。歴史上初めて一般公開された海軍施設の中にパビリオンが仮設された。階上に上がり吹き抜けを見下ろすと、そこに忽然と広がるのは長閑(のどか)なビーチ。水着の老夫婦や若いカップル、子ども連れが寝そべりながら、代わる代わる朗々と歌声を披露する。のんきに聞こえるが、その歌詞は気候変動や過労死など社会問題を語り、未来を憂う。女性作家3人によるこのオペラ・パフォーマンスは、プロのオペラ歌手と地元の公募ボランティアにより水曜と土曜に演じられている。

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フランス館 展示風景

 プレビューでは長蛇の列に並んでようやく入館したフランス館でも、濃密な作品世界が展開されていた。ロンドンを拠点とするロール・プルーヴォ(1978~)は、フランス人の女性作家として初めてターナー賞を受賞したアーティスト。水上都市にまつわる神話的な世界を、ヴェネツィアとフランスを結ぶロードムービー風の映像とさまざまな暗示的なオブジェを積層させたインスタレーションで表現していた。白い鳩のつがいや、物語に登場するダンサーのパフォーマンスが非現実と現実を橋渡しする。

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ブラジル館 展示風景 

 バルバラ・ヴァーグナー&ベンジャミン・デ・ブルカによるブラジル館の映像も強く惹き付けられた作品だ。作品タイトル《Swinguerra》は、ブラジル北東部で人気のあるダンスのムーヴメント「swingueira」と戦闘を意味する「guerra」を組み合わせた造語。男女混合(トランスジェンダーを含む)チームが、体育館でリハーサルを重ね、最後にダンスバトルを繰り広げる。その強靭な肉体から躍り出る苛烈で雄弁な身体言語は、現代ブラジル社会が抱える、人種、コミュニティー、ジェンダーの対立と欲望の構図をあぶりだす。