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〈左〉アーサー・ジェイファ 展示風景 〈右〉ジミー・ダーハム 展示風景

 個人部門の金獅子賞は、ともにアメリカ出身で、数十年にわたり黒人差別や人権問題を告発する作品を発表してきたアーサー・ジェイファ(1960~)とジミー・ダーハム(1940~)が受賞した。

 アーサー・ジェイファの圧倒的存在感を持つ壮大なインスタレーションは、黒という色が持つ美、力、恐怖、痛み、歴史、魔術のダイナミズムを表明した。

 ジミー・ダーハムによる黒蛇紋岩をフレーミングした重厚な彫刻や、家具や古着を組み合わせた動物の像はいずれも儀式的で、人類と自然の葛藤をうたう詩性に満ちていた。

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ザネレ・ムホリ 展示風景

 全会場を通じて、ビジュアル的にも、コンセプトの強さでも、アフリカ系アーティストの活躍が目立っていた。なかでも強烈な視線に撃ち抜かれたのが、南アフリカ出身でレズビアンを表明するヴィジュアルアクティヴィスト、ザネレ・ムホリ(1972~)のセルフポートレートだ。南アフリカでLGBTが置かれてきた困難な状況を露わにし、芸術を通して社会的な意識改革を促すことを目指してきた。洗濯バサミやスポンジの冠などで装飾した、威厳に満ちたセルフポートレートは、白人家庭の使用人として働きながら生き抜いた黒人女性たちを祝福する。

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片山真理 展示風景

 ジャルディーニ会場では、そのムホリと、日本から参加した3作家のひとりである片山真理(1987~)のセルフポートレートが対面で展示されている。片山の視線もまた鑑賞者の弛緩した意識を鋭く射抜く。先天性疾患から9歳のときに自らの意思で両足を切断した片山は、義足で歩くことを覚え、手仕事を習い、作品を創作し、恋愛や子育てを経験してきた。彼女の数奇な生の真実と堂々たる写真表現は、作品と向き合う多くの人たちの思考を動かし、人生を揺さぶるに違いない。

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マーガレット・ワーザイム&クリスティーン・ワーザイム 展示風景

 ほっこりしたのは、オーストラリアの双子の姉妹マーガレットとクリスティーン(ともに1958~)による、かぎ針編みの珊瑚だ。暗い展示室で妖しげな蛍光色の光を反射するのは、生物標本のようだが、すべてハンドメイドの海の生物。リビングでくつろいでいるときに偶然発見した手法を発展させ、針金やビデオテープ、ガラスビーズなどで豊潤な造形を編み出した科学者と芸術家の姉妹は、インターネットでプロジェクトへの参加を呼びかけた。いまでは40以上の国と都市の人々がこのヒエラルキーのないコラボレーションに参加し、珊瑚礁を増殖させている。