自宅で過ごす時間が増え、クローゼットの整理にいそしんだ人もいるかもしれない。そうして出てきた不要な衣類を、被災地支援として活用する手がある。「織り織りのうたプロジェクト」では、岩手県に伝わる「裂(さ)き織り」という手法を使い、古着、古布を利用して美しいラグやヨーガマットを制作している。発起人で代表の早野智子さんに、私たちにもできる支援について聞いた。

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古着、古布を利用して織った美しいラグ、ヨーガマット

 フリーマーケットにも気軽に参加できない今、着なくなった服をどうしよう? そう悩むなら、被災地支援として寄付するのはどうだろうか。

「織り織りのうたプロジェクト」は、東日本大震災の被災地支援を行うプロジェクト。岩手県に伝わる「裂き織り」という手法を使い、寄付された古着や古布でラグやヨーガマットを制作・販売している。適している衣類は、Tシャツ、ポロシャツ、カットソーなど、程々の厚みがあるもの。素材は問わず、綿のほか、シルク、化繊も可能だという。

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製品はすべて一枚一枚手作りされた一点物

 寄付方法は、洗濯済みの古着、古布を段ボールに詰め、岩手県下閉伊郡岩泉町(いわいずみちょう)にある工房に送るだけ。5箱以上の場合に限り、事前に連絡が必要だ。

 支援の方法はもう一つある。できあがった製品を購入することだ。ラグ、ヨーガマットのラインナップは、カラフルな「虹」、ブルー系の「海」、アースカラーの「山」、ホワイト系の「雪」、岩泉町の樹木の草木で染めた「色葉うた」のが5種類。色彩で東北と三陸の震災以前の美しさを表現している。

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さまざまな色をランダムに織り上げた「虹」(ランダム)。
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「虹」(グラデーション)。ビビッドな色合い、パステルカラーなど、そのときどきの素材で雰囲気は変化する。
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東北・三陸の海をイメージしたブルー系の「海」。
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アースカラーで表現した「山」。
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白系の布で織った「雪」。純白からオフホワイトまで、白にもさまざまな表情がある。
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岩泉の四季折々の植物で「雪」を染め上げた「色葉うた」。優しい色合いが特徴で、赤だけでなく黄や緑、ベージュなども。

 価格はすべて¥8,640(税込み)。完全受注生産で、注文後、1カ月から1カ月半(「虹(グラデーション)」のみ3カ月ほど)後に手元に届く。

 大きさは、幅60cm×長さ180cm×厚み3mmが基本。長さはリクエストが可能だ。色合いについても相談できる。なかには「子どもが着ていた服で遊び用のマットを作ってほしい」「亡くなった母の服で玄関マットを作ってほしい」といったオーダーもあるという。

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ラグやヨーガマットのほかに、ヨーガや瞑想中に使用する「メヘンディ調 足の甲あて」 全4色/¥1,296(税込み)なども販売中。

岩泉の古い手仕事を生かし、気持ちの循環をつくる

「織り織りのうたプロジェクト」がスタートしたのは、2011年。発起人の早野智子さんは東日本大震災の直後、縁のあった岩泉町へたびたび支援物資を届けにいっていた。

 ヨーガ講師が本職の早野さんは、息苦しい生活を強いられた避難所の人々と交流するうち、次第にヨーガを教えたいと考えるようになる。深い呼吸を取り戻し、心穏やかになってほしいと願ったのだ。その際、ヨーガマットには手織りのものを使いたいと感じたことが、プロジェクトがスタートするきっかけとなった。

「岩泉には、裂(さ)いた着物を織って再利用する“裂き織り”という習わしがあります。その織り方で、支援物資の中で山積みになった衣類をマットに変えてはどうかと考えました」(早野さん)

 資源としてだけでなく、物資の送り手の気持ちも無駄にしたくないという思いがあった。

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織り手の三浦久米子さん。岩泉の工房で毎日マット織りに励んでいる。

 当時、仕事を失った人々の居場所としても貢献していたマット織り。復興とともに織り手は減り、現在は岩泉町に住む三浦久米子さんが一人でその役を担っている。

 震災当時、岩泉町は大津波に襲われた。しかし、三浦さんは「海」や「山」などを織りながら改めて自然を観察するようになり、海を見るのが嫌ではなくなったという。今では、マット織りが生きがいにまでなっているそうだ。

「今後も、立ち上げ当初の志を忘れずに運営していこうと思っています。大量生産などの商業主義にはしることなく、人々が助け合い、寄り添い合うことを一義とした活動を続けるつもりです」(早野さん)

 古着、古布を手放す。マットを織る、マットを購入する。これらが人の思いでつながるとき、生まれるのはあたたかな循環の輪だ。その輪に加わったとき、私たちの一つひとつの小さなアクションが響き合い、やがて誰かの力に変わる。

織り織りのうたプロジェクト
東日本大震災で被災した土地の手仕事を生かすために立ち上げられた支援プロジェクト。岩手県岩泉町(下閉伊郡 しもへいぐん)の女性が、東北、三陸の自然の美しさを織りで表現したヨーガマット、ラグを制作している。

https://oriorinouta.wordpress.com/

Text:Yue Arima Edit:Ayaha Yaguchi

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