完璧な素材選びから始まる、ロブション氏の料理の世界

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5 ロブション氏をはじめ一流シェフが取り扱う、ラ メゾン ノルディックのエトワール店。壁には巨匠たちの写真が。 6 創設者のケヤン・エスラムドゥスト氏が各キャビアについて説明。 7 高品質のキャビアのほか、サーモンなどのシーフードも取り揃える。

 そんなロブション氏に、美味しい料理を作る秘訣は?と尋ねると、「食材に対するリスペクト。いかに食材を大切にするかということですね。肉にしても魚にしても、育ってきた命を絶って作るので、大切に扱うことが大事です。そして、仕事に対しての厳しさも重要ですね」と真剣な面持ちに。素材に対する果てしないこだわり。その思いが並ならぬものであることが、言葉の端々に見え隠れする。

 素晴らしい食材を見つけるには、生産者たちとの信頼関係も大切だ。例えば、キャビアは「ラ メゾン ノルディック」のものを使用している。創設者のケヤン・エスラムドゥスト氏が、オルレアンの南のソローニュ地方の池で養殖するフランス産のキャビアは、フランスの一流シェフたちが認める極上のもの。まるで黒い宝石のような艶と濃厚な風味が持ち味で、試食してみると、まるでロブション氏のこだわりを投影したかのような味わいに唸らされる。

「ラ メゾン ノルディック」のアトリエはパリ郊外にあるが、昨年新店舗がフォブール・サントノレ通りに登場。黒大理石やガラスで覆われた店内はモダンな雰囲気で、ここでキャビアやサーモン、タラマなどをテイクアウトすることもできるし、奥のレストランでゆっくり味わうこともできる。

料理とお酒のペアリングの可能性を追い求めて

パリの左岸にあるロブション氏によるワインショップ、ラ・カーヴ・ドゥ・ジョエル・ロブションの店内。同氏お気に入りのワインやシャンパンなどを取り揃え、地下にはカーヴも設置されている。店内に並んでいるのは、ビオやナチュラルワインが中心。なかなか手に入らないレアなワインが見つかることも。コストパフォーマンスの優れたものが多いのもうれしい。

 料理とお酒のペアリングを探求し、自らが考案した新しいマリアージュを提案することも、ロブション氏の取り組みのひとつ。10年前には、ワインショップ「ラ・カーヴ・ドゥ・ジョエル・ロブション」をパリにオープンした。小さなワイン生産者たちとのつながりを大切にし、長年一緒に仕事をしてきたスタッフにショップをまかせ、フランス各地のレアなワインを中心に、常時1万本を取り揃えている。ロブション氏はシラーやメルローの繊細なワインが好みだという。

黒と白で統一された店内。旭酒造 TEL:0827-86-0120

 また、「獺祭」は同氏が惚れ込んだ日本酒として広く知られているが、いよいよ今年4月、彼が獺祭とコラボした食文化の複合店「ダッサイ・ジョエル・ロブション」がパリ8区に誕生。1階がパティスリー、2階が獺祭バー、ストアとティーサロン、3階がレストランという構成になっている。

「私が大変気に入っている洗練とエレガンスを兼ね備えた日本酒、獺祭を、この新しい複合店からフランスの人々へと、より一層広めていきたいと思っています。日本酒にはキャビアやモンドールなどのチーズをはじめとするフレンチが合うのではと考え、このプロジェクトを進めてきました。3階のレストランでは“フランコ・ジャポネ”、つまり日仏のヘルシーな料理を提供していく予定です」

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ダッサイ・ジョエル・ロブションのシェフのファビアン・フランソワ氏とシェフ・パティシエの中村忠史氏。ともにロブションのもとで長年働く実力派。3階のレストランでは日仏の料理を堪能できる。

 シェフは、ロブション氏のもとで長く働いてきたファビアン・フランソワ氏、シェフ・パティシエは中村忠史氏が担当。六本木や香港などのロブション氏のレストランで15年間働いてきた中村氏は「彼は唯一無二の人物。器の大きな人です。みんなロブションに喜んでほしい一心で、頑張っています」と意気込みを話す。獺祭の酒粕を使ったスイーツやパンなども販売するということで、新しい挑戦が楽しみなところだ。

 最後にロブション氏は「今後、私の故郷ポワティエに近いモレオンに、1400名を受け入れる料理学校『アンスティチュ・ロブション』を開校する予定です」と心弾む様子で語ってくれた。約100億円をかけて創立する学校は、2020年以降に開校予定。彼の夢がまたひとつ花開くことになりそうだ。

Photos: Sumiyo Ida Text: Mariko Awano

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