理論物理学の博士号をもち、有名進学予備校で数学の講師を務める一方、自ら主宰するソムリエスクールで教鞭を執るほか、飲食店経営やワインと日本酒の輸出入業も行うなど、ユニークかつパワフルに活動するワイン研究家、杉山明日香さん。本連載では、彼女が毎月視察に訪れるというシャンパーニュ地方の新潮流にフォーカス。

「テロワールは品種を超える」という信念のもとに

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アヴィーズ村に位置するシャンパーニュ・アグラパール・エ・フィスの外観。

 みなさん、こんにちは。「杉山明日香のシャンパーニュ紀行」第12回は、シャンパーニュの中心であるランスから南へ車で30分ほど、シャルドネで有名なコート・デ・ブラン地区のグラン・クリュであるアヴィーズ村にある、ドメーヌ・アグラパールを訪問しました。優れたRM生産者(家族経営の小規模生産者)の多いこの地区の中でも、アグラパールは畑の8割近くがグラン・クリュ。素晴らしいシャンパーニュを生む現当主、パスカル・アグラパールさんにお話を伺いました。

明日香:(ドメーヌにて)こんにちは、パスカルさん。4月にランスであったテイスティング会「Terres et Vins de Champagne(テール・ゼ・ヴァン・ド・シャンパーニュ)」でお会いして以来ですね!

パスカル:あのときは、ほかの造り手のスティルワイン(瓶内二次発酵する前のベースのワイン)も一緒にテイスティングして、楽しかったですね! 私もかなりいい気持ちになりましたよ(笑)。

明日香:私もです(笑)。では、さっそくですが、酔う前にインタビューを。まずは、ドメーヌの歴史を教えてください。

パスカル:もともとの歴史はとても古く、1894年に私の高祖父(曽祖父の父)にあたるアルチュール・アグラパールが、このアヴィーズ村にドメーヌを設立したのがはじまりですが、実は2代目にあたる曽祖父のときに、一度、倒産してしまったんです。今のドメーヌは、1950年代に私の祖父が新たにシャンパーニュ造りを始めてからになります。

明日香:パスカルさんは新生アグラパールの3代目、ということですね。ドメーヌを継がれたのはいつでしょうか。

パスカル:私が継いだのは1981年ですが、あらかじめ絶対に継ぐ、と思っていたわけではないので、実際に受け継ぐ数年前から、継ぐか継がないかというのは我が家で結構な問題になりました。