山﨑
辿り着いた火入れの技で、極上の食感を実現

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この日の鰻は岡山県児島湾産。他に宍道湖、大阪湾、九州の海鰻を使う。揚げた葱を添えることで、とうもろこしご飯と鰻の蒲焼きの味わいの結びつきが強まる。

「山﨑」で鰻が登場するのは、コースでご飯が供されるとき。土鍋の蓋を開けると、鮮やかなとうもろこしが一面に敷き詰められたご飯が現れる。湯気と香りが立ち上るご飯をしゃもじでお茶碗に盛り、折敷(おしき)に赤出汁、香の物が整えられていくと、タレにくぐらせた天然鰻の蒲焼きが絶妙なタイミングで運ばれてくる。表面はパリパリ、中はしっとり……単体でも十分にうっとりとするような満足感だが、とうもろこしご飯にのせて食べると、その相性のよさに驚かされる。

 串に刺し、炭火で20分ほどかけて地焼きで仕上げている鰻の、最大の特徴は2枚重ねであること。皮目を外側にして2枚の身を重ね、串に刺している。「身を内側にして重ね合わせることで、直接炭火が当たらずに水分が保たれ、蒸しているような状態になります。今年に入ってから辿り着いた焼き方です」と語るのは、店主の山﨑志朗さん。焼いているときの状態のまま、皿に載せて供されるというわけだ。

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山﨑志朗氏。1987年、東京都生まれ。赤坂の紹介制の日本料理店で8年間研鑽を積んだ後、日本料理以外のジャンルを経験。2015年、「霞町しろう」にて独立を果たす。

 山﨑さんが「山﨑」をオープンさせたのは、2018年8月のこと。それ以前の「霞町しろう」でも天然鰻の食べ比べを提供していたことからも、熟知し、こだわりをもった食材であることがわかる。タレは焼いた鰻の骨をふんだんに使い、醤油、みりん、ざらめで甘さを控えめに整えたもの。「霞町しろう」のときから使い続けているという。

 聞けば、かなりのワイン好き。「シャンパン、白、赤と飲み進めていった際、赤ワインに合う料理で、肉以外のものを考えたところ、鰻に辿り着きました」と山﨑さん。ピノ・ノワールなど軽めの赤ワインは、鰻との相性が非常にいい。通常、日本料理の華は椀刺(わんさし:御椀と刺身)といわれるが、後半にもしっかりと華が待ち構えている。

自身が思い描く日本料理屋へと進化した「山﨑」

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なめらかな奈良県の吉野檜を使ったカウンターは8席。鰻を焼く炭の台は、カウンター内の壁側に設置されている。静かで穏やかな時間が流れ、西麻布にいるということを忘れるほど。

「料理に見合った空間で提供したい」と、移転を決意した山﨑さん。さらに、「(銀座などを除き)やはり日本料理屋は1階にあるべきもの」という考えもあった。以前の「霞町しろう」と同じ西麻布を選んだのは、常連さんに引き続き訪れてほしいという思いがあったから。入り口からの動線によって期待が高まり、天井の高さを活かした内装は居心地がいい。

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最初に供され、涼を感じる一皿。鱧の皮目を炭火で炙り、梅干しのジュレを合わせている。料理はすべて、10品前後で構成されるおまかせコース(¥25,000)からの一例。

 料理は、おまかせのみ一本で、紹介している鱧のように静かに始まり、徐々に盛り上がっていく。その終盤に存在感を放つのが、今回のテーマでもある鰻だ。鰻は天然にこだわるため5月から10月頃までのみで、12月から3月は新潟や岐阜の真鴨を提供する。またスペシャリテである炭火焼きのスッポンもぜひ味わっていただきたい。

 日本料理は、一連の流れにも料理人の感性が表現されるもの。その中で鰻を効果的に、高い存在感で組み込んでいる。予約困難店だが、待ってでも訪れる価値がある一軒だ。

山﨑
住所:東京都港区西麻布1-15-3 西麻布UOUビル 1F
TEL:03-6812-9848
営業時間:17:30~と20:30~の2部制
定休日:日曜、月曜
※価格はすべて消費税・サービス料10%別

Photos:Shinsuke Matsukawa Text:Yui Togawa Edit:Mizuho Yonekawa

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