結婚する前は父親に、結婚してからは夫に、「望まれるだけの人形」のように生きてきた女性ノラ。ヘンリク・イプセンの古典演劇『人形の家』は、そんなノラが自分の意思で、しかも3人の子どもを置いて家を出ていくまでの物語。でもふと考えるのは、そんな何もできない女性がその後どうやって生きていくのか、果たして生きていけるのか……。8月から上演される舞台『人形の家 Part2』は、そのノラが15年ぶりに家に戻り、巻き起こる騒動を描いた作品だ。主演は3年ぶりの舞台出演となる永作博美さん。「今は、ノラの生き方に対して一歩踏み込んだ議論ができる時代」と語る永作さんは、ノラの知られざる15年をどんなふうに想像したのだろうか?

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女性の生き方について、一歩踏み込んで考える機会になる作品

──作品の印象を教えてください。

 お話を聞いた時に思ったのは、イプセンが書いた『人形の家』の続きが読めるんだ、ということですね。続きって書いちゃってもいいんだ、っていう(笑)。実際に台本を読んでみると、思い描いていたものとはまったくイメージの異なる作品でした。『人形の家』は100年以上前に書かれたもので、夫に頼りきりの“お人形さん”のような主婦ノラが、自分の意思で家を飛び出すまでのお話です。今回の作品は、その15年後にノラが家に戻ってくる話。あのノラがこんなにも変われるんだと思うほど、意見、意思が無数の弾丸のように発されて。出発点が19世紀の古典なので、今回の舞台もその当時ではありますが、現代的な問題提起があって、観客の方には今に通じる話として観ていただけると思います。

──現代的な問題提起という部分を、もう少し教えていただけますか?

『人形の家』が発表されたころは、「母親が子どもを置いて家を出てしまう」という結末が衝撃だったと思うんですが、140年たった今は、多少なりともそういった情報を知っています。でも、当事者でない人たちは「とはいえ、なかなかそこまでの事態にはならない」と思っているところもある。女性の生き方に対して、誰もがもう一歩踏み込んだことを言えるいいタイミングだし、考える機会になればいいなと。舞台を見た後に、食事に行ったり、お茶を飲んだり、お酒を飲んだりしながら──深酒しそうですけれど(笑)。きっと作品の話をしているうちに、誰かの話になったり、そういえば……って自分のことを考えなおしたり。結婚している人であれ、していない人であれ、誰もがいろんな問題を抱えている現代ですから。

──どんなところが見どころでしょうか?

 ノラの夫のトルヴァルと、ノラに代わって娘を育てた乳母のアンネ・マリー、ノラの娘のエミー、それぞれ立場や地位が違う相手との二人芝居が続くのですが、そのセリフの応酬は刺激的です。どの人の言うこともわかるし、どの人も勝手(笑)。脊髄反射的に返してしまった言葉もあれば、考えて口にしたのに本音が出てしまったり。みんなすごく揺れ動いているし、すごく喧嘩しているし。結局、それこそが人間なんですよね。
 あと、個人的には「ノラの顔」が見たいです。このセリフをどんな顔して言うんだろうって……まあ自分が演じるんですが(笑)。やっぱり「どの面下げて帰ってきた」みたいなところがあるじゃないですか。何の用で? 何を言いに? 何のために?って。

──最初にこの企画を聞いた時は、「やっぱり家に帰ってきたかった」という話なのかと。でもそうではまったくなくて……。

 そういう期待はありましたよね。

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