若手の音楽家に演奏の機会を与えるシャネル・ネクサス・ホールの独自のプログラム「シャネル・ピグマリオン・デイズ」。今年で15年目を迎えた同プログラムの出身者には、現在、クラシック界で幅広く活躍するアーティストも多数存在する。いま注目を集めるチェリストの笹沼樹さんもそのひとり。当時の思い出や現在の活動などについて聞いた。

ソロ、カルテット、オーケストラの3本柱で異彩を放つ

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シャネル・ネクサス・ホールでは通常の「シャネル・ピグマリオン・デイズ」のほか、年に2回「シャネル・ピグマリオン・デイズ 室内楽シリーズ」を開催。初夏のシリーズでは「ピグマリオン・デイズ」の卒業生たちが、第一線で活躍する海外の音楽家とともに演奏を披露。今年6月の同シリーズには笹沼さんも登場し、豊かな音色を響き渡らせた。

 ピカソやストラヴィンスキーなど、同時代の芸術家たちを熱心に支援したココ シャネルの精神を受け継ぎ、2005年の設立以来、アーティストをサポートし続けているシャネル・ネクサス・ホール。その活動の一環として、若い音楽家たちを育成し、年間数回にわたるコンサートの機会を贈る「シャネル・ピグマリオン・デイズ」というプログラムがあることをご存じだろうか。

 次代を担う“大型”新人として注目されるチェリスト・笹沼樹さんも、2017年に同プログラムに選ばれた音楽家のひとりだ。同じ年、母校・学習院大学で行われたリサイタルが天皇皇后両陛下(当時)を迎えた天覧公演となったことも話題を集めた。その後、国内外のコンクールで受賞を重ね、日本コロムビアが若手アーティストを集めて設立した新レーベル「Opus One」に所属。ソロのチェリストとして活躍しながら、弦楽四重奏(「カルテット・アマービレ」メンバー)、さらにオーケストラ(NHK交響楽団のアカデミー生)という3本柱で活動の幅を広げている。

「チェロは楽曲の通奏低音であるベースラインを担当しながら主旋律を生かす楽器。歴史上あらゆる時代の音楽で、すべての音色を関連づける役割を担っています。オーケストラでは作曲家と指揮者の発想や音の運び方を伝え、カルテットでは響きの調和を取り、ソロでは歌心で聴衆と対話します。3つのバランスを取るのは難しいだろうとよく聞かれますが、柔軟な発想で対応するようにしています。いまのところ活動を1本に絞ることはないと思っているんです」

 普段からよくクラシック音楽を聴くような家庭環境ではなかったが、小学2年生の頃、自分から意識的にチェロを習いたいと考えたという。チェロという楽器に惹かれた理由は何だったのだろう。