ハマム生まれのシャンプーは「美容師の味方」に

Y:そして最初に生まれた商品が、まさにこのシャンプーなんですね。

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I:美容室を経営してきたなかで、納得できるシャンプーってあまりなかったんですね。そこでモロッコのハマム(スパ)で観察していたら、皆、泥みたいなものでシャンプーしてたんです。「それ何?」って聞いてみたら「ガスールっていう粘土よ」って教えてくれて。自分でガスールを買ってきて、でもそれだけでは汚れは落ちても潤いが十分ではないなと思い、ローズウォーターを加えて、さらにアルガンオイルをブレンドしました。実は最初は自宅の台所で調合し、経営する美容室のお客様に試してもらったりして、工夫を重ねました。

Y:そして、2004年にローズ ド マラケシュ初の製品、クレイシャンプーとヘアコンディショナーを発売。

I:お陰さまで、スタートからすごく評判がよかったんです。そしてもっとすごかったのが、美容師さんたちの手。一日に何回もシャンプーする彼ら彼女たちの手は、ボロボロになって冬にはあかぎれになったり、本当にかわいそうだったんですが、天然由来のガスールを使うことで、荒れにくくなりました。

Y:次はスキンケアに。モロッコといえば、紫外線が強くて乾燥し、お肌には過酷な環境ですよね。

I:そう。私ね、環境が厳しいからこそ、モロッコの女性たちはいいものとそうでないものが選別できるんだと思うんです。厳しい環境にいる彼女たちだからこそ、お肌を磨くことが大切だってわかっている。だってお手入れをしなかったら、シワシワの砂漠みたいなお肌になってしまうもの。でも彼女たちは、年配になってもメイクをしなくても、本当に肌が綺麗なんです。

1000年前から伝わる、薔薇とアルガンの美容法

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Y:スキンケア製品として最初に出したのが……。

I:薔薇水、ローズウォーターでした。これはシンプルに薔薇の蒸留水なんです。一輪一輪手摘みされた薔薇は、農家で一日乾燥させ、半乾きのような状態になったら、水蒸気蒸留法で薔薇のエッセンスを採っていくんです。今はアルコールなどの溶剤で抽出するローズアブソリュートが主流ですが、この村ではそれを一切やっていないくて、昔ながらの蒸留法。効率が悪いし、薔薇もたくさん必要になるのですが、モロッコの人たちは昔から伝わることを頑固なまでに守るんです。おばあちゃんの知恵がお母さんに、お母さんから娘さんへと、1000年も前から同じことを続けている。でもその分、このローズウォーターの心地よさ、日焼けした肌も穏やかに鎮静するパワーは、皆に愛されるのだと思います。

Y:さらにアルガンオイルを発売。

I:ローズウォーターでケアした後、モロッコの女性たちはアルガンの実を搾ったオイルを使うので、気になっていたら、「じゃあ私の親戚がいるから」と薔薇の谷の人がアルガンオイルの生産者を紹介してくれて。私は素人だったので気づかなかったのですが、「モロッコまで行かなくても、日本の原料メーカーさんでアルガンオイルも買えますよ」と言われたりもします。でも人と人とがつながり、毎年農家さんたちと薔薇の出来などを10年以上話し続けてきたからこそ、ローズ ド マラケシュらしさが育ってきたのかなと思うんです。

Y:実際、現地で直接生産者から買いつけることで、品質の違いは感じますか?

I:全然違うと思います。ビンに詰めたり、製品化をしてくれている日本の工場では、いろいろなブランドを扱っているわけなんですが、うちが工場にアルガンオイルを持ち込んだら「アルガンオイルでも、こんなに違うんですか?」と驚いていました。「アルガンオイルのよさが初めてわかった」とも。私は農家さんと直接やりとりをしているので新鮮なのと、一番搾りだけを選ばせてもらっているので、酸化が少ないんです。現地に行って、実際にアルガンオイルを搾っているところを見るとわかるのですが、1回搾り終わった後にさらに1回搾るんです。そういう二番搾りのものも、市場では同様に「アルガンオイル」なんです。

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