Y:フェイス トゥ フェイスだからこそ、いいところを分けてもらえるんですね。

I:そうです。またアルガンオイルは今、アンチエイジング効果が世界中で人気なので、需要と供給のバランスが悪くなり、混ぜ物が多くなってしまっているんです。特にオリーブオイルは色も似ているし、混ぜてもわかりにくいそう。

 アルガンの実は山羊の大好物で、木に登ってまで食べるんですね(上写真)。山羊たちが外側の柔らかい果肉だけ食べて中の堅い種子を下に落としたのを、女性たちが拾ってきて殻を砕き、種子の中の仁からオイルを搾るんです。これは力仕事の上、ひとつの実からオイルは7%しか採れないので、本当に貴重な成分だといえます。

Y:こんなに手間のかかるオイルを、モロッコでは昔からわざわざ使ってきたんですね……。

I:経験則だと思うんです。向こうではオリーブも育つし、アーモンドやいろいろな実からもオイルは採れるんですね。そんななかで、アルガンオイルが残ったんです。実際、アルガンオイルは抗酸化成分のビタミンEが豊富だし、熱にも強い。彼女たちは自分のお肌につけたり太陽にあたることで、それを体感したんだと思います。

「働いてもお金がもらえない」女性たちのために

Y:それにしても、力作業だし手間がかかるし、大変そうですね。

I:そうなんですよ。だから最初はね、彼女たちも自分たちで使う分だけつくり、売る気はなかったんですが、「ちょっとだけ」と徐々にお願いしていって。

Y:でも彼女たちにとっても、それで現金収入が増えるわけだから、嬉しいですよね。

I:それが最初はね、そんなに喜ばれなかったんです。村を見渡しても、特にお金持ちもいないし、同じくらいの生活の農家さんばかりなので「お金が欲しい」という気持ち自体があまりないんですね。しかもイスラム圏なので女性は貯金通帳を持つことができず、お給料を払うときには旦那さんが来て、すべて取っちゃうんです。

Y:働いてお金をもらっても、自分では何も買えないし、いいことなんて別にないんですね。

I:私、よくワークショップをやるんですけど、「この先何がしたい?」「お金があったら何を買いたい?」って聞いても「想像できない」って言われます。でも最近はいろいろな情報が入ってきて、「子供を学校に行かせたい」「もっと都会の学校に入れたい」と言う人も。でも、旦那さんは反対するわけです。特に女性は教育を受けられない。「私はもういいけれど、娘には教育を受けさせたい」っていう母親の声は切実なんです。

[画像のクリックで拡大表示]