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器には、もとはニシンの酢漬けなどのオードブルを盛り付けていた皿、コルトンディッシュを使う。横長で高さもある船型の器に特別感が宿る。

「ニューグランドのプリン・ア・ラ・モードにレシピは存在しません。作り方は先輩から口承されてきたもので、後輩はその味を舌で覚え、未来へ伝えていくのです」(熊倉さん)

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鮮やかな手つきでフルーツをカットする。ウサギ形のリンゴは、もともとアロー(arrow 矢)カットという飾り切りから発展したもの。「かつては矢のような形にカットしていたのでは」と熊倉さんは推測する。

「大事にしているのは、教えられた味を忠実に再現し続けること。現代なら、昔よりもいい材料、新しい技術を使って、時代に合わせたおいしさを追求することもできるでしょう。しかし、私たちにとっては、レシピになっていない伝統的な味を変えずに守ることにこそ、大きな意味があると考えています」(熊倉さん)

 そうした“伝統”の持つ魔力ともいうべき凄みを感じさせてくれるものは他にもある。例えば、ホテル内に秘められた「フェニックスルーム」だ。普段は非公開となっているこの部屋が、8月11日から14日の4日間のみ、特別喫茶室「フェニックスティールーム」となってオープンする。

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「フェニックスルーム」は安土・桃山時代の建築様式が用いられ、存在感のある木の柱梁、吊り灯籠風の照明、格子天井といった“城”や“寺”を思わせるオリエンタルなデザイン。右は1930年頃のもの(画像提供/ホテルニューグランド)。
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期間限定の特別喫茶室「フェニックスティールーム」では、開業時からホテル内で使われてきた椅子も必見。ぜひ背の部分にご注目を。当時と同じ籐の透かし編みになっているものは、今や数少ない貴重品。