同時代の芸術家たちを熱心に支援したココ・シャネルの精神を受け継ぐ、銀座のイベントスペース「シャネル・ネクサス・ホール」。9月1日(土)から29日(土)までの期間は、日本を代表する写真家・立木義浩の写真展「Yesterdays 黒と白の狂詩曲(ラプソディ)」を開催する。会場に並ぶのは、今年81歳を迎える同氏の最新シリーズ。被写体の女性たちの瑞々しい「いま」を捉えたものだ。

モノクロの世界から浮かびあがる質感、光と影

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©YOSHIHIRO TATSUKI

 立木義浩は1937年、徳島で明治時代から写真館を営む家に生まれた(のちに生家はNHK朝の連続テレビ小説『なっちゃんの写真館』のモデルとなる)。1958年に東京写真短期大学(現・東京工芸大学)卒業後、写真家として活動を開始。広告、ファッション、ポートレートといった幅広い分野で活躍しながら、ライフワークとして都会的な叙情性をたたえた写真作品を発表してきた。
 彼が写真作家として注目された最初の作品は、1965年に雑誌「カメラ毎日」に56ページにわたって掲載された《舌出し天使》だった。一人の女性を主人公に都市のファンタジーを表現した本作は、今年の秋、約50年の時を経て、写真集として出版されるという。

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 立木はその後も、コケティッシュな魅力で一世を風靡した女優・加賀まりこをヒロインに、“ヌーヴェル・ヴァーグ”の映画を連想させる世界を展開した『私生活 加賀まりこ』(1971年)をはじめ、戦後の日本に大きな影響を与えるアメリカを旅して大国の素顔を捉えた『マイ・アメリカ』 (1980年)、家族の絆を感じる瞬間を写し留めた『家族の肖像』(1990年)、スナップショットの手法で日常のドラマを炙り出した『風の写心気』(2006年)などを発表。近年では、変わりゆくキューバの首都ハバナに滞在して、鮮烈な色彩にあふれた街並みや人々の生活を撮影したシリーズも注目された。

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 本展ではデビュー以来、立木が一貫して取り組むモノクロの写真に立ち返る。モノクロのスナップショットを軸に、 四季を通じて行われた4人の女性たちとのフォトセッションによる新作が初公開される。彼女たちの名前やプロフィールはあえて明かされず(双子の姉妹がいることだけはわかっている)、ただ「現代を生きる女性」の姿にフォーカスする作品になるという。黒と白に変換された世界のなかに躍る光と影、肌や空気の質感に注目したい。
 タイトルの「Yesterdays」とは、ビートルズの楽曲ではなく、ジャズのスタンダードナンバーから引用された。若い時分から銀座のジャズ喫茶に通いつめた立木が愛してやまないジャズの世界にも通じる「自由さ」や「哀切」が、うつろいゆく時間のなかでスナップショットが捉えた奇跡的な瞬間に凝縮されるのである。

立木義浩写真展 Yesterdays 黒と白の狂詩曲(ラプソディ)
会期:9月1日(土)~29日(土) 12:00~19:30 無休
※9月14日(金)はイベント開催のため17:00クローズ
会場:シャネル・ネクサス・ホール(東京都中央区銀座3-5-3 シャネル銀座ビルディング4F)
入場料:無料

Text:Chie Sumiyoshi Edit:Kaori Shimura

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