映画 『利休にたずねよ』の題字を手がけたり、インターナショナルなブランドに作品を提供したりと、幅広い活躍が注目されている書家の木下真理子さん。彼女が日本のパワースポットを訪れる企画がスタート。第1回は、世界文化遺産に登録されている古刹、高山寺。書家ならではの感性に響いたものとは……。

石水院の西正面にある廂(ひさし)の間。落板敷(おちいたじき)の中央に鎮座する善財童子と向き合う。吊り上げの蔀戸(しとみど)や菱格子戸を囲む景色は、季節ごとに彩りを変える 。
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 一般的にパワースポットというと “何かご利益を得られる”とか “自分に不足しているエネルギーをチャージしてもらえる”とか、そんな場所として捉えられているように思います。その一方で、日頃の疲れを優しく癒やしてくれたり、身心を浄化してくれたりするパワースポットもあります。
 仕事をしていると否が応でも、複雑で難しい人間関係による目には見えないストレスや、ノルマの達成など言葉にならないプレッシャーが圧しかかってきます。そんな気持ちを、物欲を満たすことで紛らわせようとしても、それはひと時の気分転換にしかならず、散財を繰り返してしまう……。
 そんな方にこそ足を運んでいただきたいのが、今回ご紹介する「高山寺」です。

“自然と共生する寺”で世俗から離れ、身心をデトックス

 京都・栂尾(とがのお)に門を構える「栂尾山・高山寺」。
 老杉や巨松、古楓が頭上を覆い、神護寺へと続く清滝川のせせらぎも届くその境域は、忙しない日常と対極をなす静謐な世界。澄み切った鄙(ひな)の空気のなかに佇んでいると、心が洗われ、清々しい気持ちになっていきます。

空を覆う木々の合間から、穏やかな木漏れ日も射す表参道。金堂へと続く亭々とした杉木立。17枚の連なる正方形の石敷きが、参拝者を境内へ誘う。
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 目に飛び込んでくるのは、抜け広がる自然の景色。何物にも囚われることがない贅沢こそ、高山寺の魅力です。
 書道において、自然の景観になぞらえるように書く「散らし書き」という技法もこれに通じていますが、‟余白”があれば、自然との一体感が高められます。