人間の在り方を問う作品に世界が共鳴

祝、パルムドール受賞! 是枝裕和監督『万引き家族』
東京の下町。ビルの間の古い平屋に夫婦と祖母、息子、妻の妹の5人が住んでいる。経済的に逼迫していて、祖母の年金もあてにしなければならない。ある日夫婦は、親から虐待されていた少女を連れて帰り一緒に暮らし始める。が、ある事件をきっかけに家族の秘密が暴かれていく。柳楽優弥が最優秀男優賞を受賞した『誰も知らない』(2004年)、審査員賞を受賞した『そして父になる』(13年)など現代日本の家族をスクリーンに投影してきた是枝裕和の集大成。
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 今年は、審査団自体も大きな話題といっていいだろう。9人の審査員のうち、審査員長のケイト・ブランシェットをはじめ5人が女性だった。驚くべきことに、女性審査員が半数を超えるのはカンヌ史上初だ。

 そんな審査員団が、コンペティション部門21作品の中からパルムドールに選んだのは是枝裕和監督の『万引き家族』だった。ブランシェットは閉会式の壇上で「今年はインビジブル・ピープルが大きなテーマだった」とコメントした。“インビジブル・ピープル”とは、社会から疎外された人々、存在しないかのように扱われている人々という意味だ。実際、21作品では不法移民の女性、スラム街に生きる子ども、隔離されたハンセン病患者……といった主人公たちが強烈な印象を残した。

『万引き家族』は、その中で最も愛された作品だった。都会の片隅で肩を寄せ合う一家は、祖母の年金や万引きなどで足りない生活費を補填しながらなんとか暮らしている。そんな家族の肖像は、確かに“今”を映し出している。

 子どもたちの表情を引き出す、是枝監督の独特の演出法は、多くの監督たちを触発してきた。この演出法は、実は子ども以外の俳優たちにも行われていて、この作品で一家の“父親”を演じたリリー・フランキーは、映画やドラマにも出演しているが、もともとはイラストレーターであり、プロの俳優とはちょっと違う存在だ。彼に演じさせるのではなく、彼の素材としてのよさを生かすことこそ、是枝の演出の秘訣なのだ。ブランシェットは安藤サクラの演技も絶賛したそうだが、是枝は、役者ならこういうふうに演出されてみたいと思わせる、つまり役者が惚れる演技を引き出せる監督なのだ。

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“女性の視点”が受賞作にも投影される結果に
<上>出産したばかりの息子を病院に残し、借金を返済するため冬のロシアの街を奔走する不法移民の5日を追った『アイカ(原題)』で体当たり演技を見せ、最優秀女優賞を受賞したサマール・イェスリャーモア。 <左下>脚本賞を受賞した『ハッピー・アズ・ラザロ』。監督は『夏をゆく人々』で審査員グランプリを受賞しているアリーチェ・ロルバケル。 <右下>審査員賞を受賞したナディーン・ラバキの『カペナウム』。前作『キャラメル』で注目されたレバノン出身の監督だ。