女性差別的価値観の刷り込みで、つらい思いをするのは男性も同じ

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──小島さんは、女性の生き方について果敢に発言をされています。思っていても言えない女性が多いなか、小島さんが恐れないのはなぜでしょうか?

 なんでなんだろう。自分自身がうまく適応できないことが多かったから。そしてやはりアナウンサーという職業についたからでしょうか。いわゆる「女子アナ」を求められたときに、こんな屈折した形で「女性」を演じないと生きていけないこと、適応すればするほど自分が誇れなくなる構造のなかでしか評価されないことに、「おかしいだろ」という気持ちがあったんですよね。

 さらに、男性優位社会で「優遇されているんだから生きやすいはず」と言われる男性も、実は生きづらさを感じているのでは、という思いもあって。

──常に「強さ」「優秀さ」を求められる男性も、大変なのかもしれないと。

「男vs.女」という構図の中で「男にモノ申す」をやりたいわけではなく、「“男は有利”と思わされている男性」「“黙って従うほうが得”と思わされている女性」、どちらも被害者だと思うんです。憎むべきは、そんなことを私たちに刷り込んだ何モノか。そろそろそれが何なのかを、冷静に考えませんかという。

──憎むべきは、何でしょうか?

 自分の中にもあると思いますよ。私だって、夫が仕事を辞めたときに「無職の男が夫なんてイヤだ!」「稼ぎのない男なんて人間じゃない」って平気で言っていたんですから。実際、両極端な自分――「バカにすんな男!」と思う私と「女のくせに生意気!」と思う私、「誰の稼ぎで食ってるの?」な私と「稼いでるだけで偉そうに!」な私、特定の価値観を強いる私と、それに抵抗する私、適応している私と、適応できずにのたうっている私――に、今も引き裂かれているんです。でもどっちにもなれないとしたら、「どっちもアリ」を肯定して生きていくしかないんですよね。難しいことではあるけれど。

 世の中で起きていることも同じで、どっちもしんどいんだし、どっちにも言い分はあるよねって「痛み分け」にしていかないと、次の段階に進めないと思います。

──そうした世の中にするために、一番必要なのは何だと思いますか?

「赦(ゆる)し」ではないでしょうか。性差別的な価値観に適応してしまった自分、男尊女卑に依存している自分。男も女も、そういう汚れちまった自分を、誰かに赦されたいと思っている。ある部分では、その役割を担うのは政治でしょうし、文化を変えていく必要もあると思います。

 もちろん私も赦してほしい。『幸せな結婚』の恵は、夫が脱ぎっぱなしにしたパンツを拾いながら「死んでほしい」と思う気持ちと、ダサい夫のダサい夢を一緒に追いたいと思える気持ち、その両方アリで「幸せ」と思える。そういう考え方こそが、私を赦してくれるものなのかなと思います。

小島慶子
1972年、オーストラリア生れ。小学生のころシンガポールと香港で暮らす。学習院大学法学部を卒業後、1995年にアナウンサーとしてTBSに入社。テレビ、ラジオに出演し、1999年ギャラクシー賞ラジオ部門DJパーソナリティ賞受賞。2010年に退社後は、タレント、エッセイストとして活動している。『気の持ちようの幸福論』(集英社)、『女たちの和平交渉』(光文社)、『失敗礼賛』(ベストセラーズ)、『解縛』(新潮社)、『大黒柱マザー』(双葉社)、『不自由な男たち』(田中俊之氏との共著、祥伝社)など著作多数。『わたしの神様』(幻冬舎)など小説も手掛ける。

Photos:Akinobu Saito Interview & Text:Shiho Atsumi Edit:Kao Tani


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