明治や大正、昭和初期に建てられた建造物には、現代の建物とは異なる魅力がある。DJ・モデル・ファッションデザイナーとして多彩な顔を持つMademoiselle YULIA(マドモアゼル・ユリア)が、そんな近代建築をナビゲート。今回は、東京・目白の男子学生寮「和敬塾」の本館を訪れた。

MADEMOISSELLE YULIA
東京生まれ。DJやシンガー、モデル、ブランド“Growing Pains”のデザイナーとして活躍。国内外のコレクションのフロントロウを飾る、ファッションアイコンとしての顔も持つ。また、今年4月から大学で日本の伝統文化について学んでいる。大正時代や歌舞伎、着物などに造詣が深い。http://yulia.tokyo/yulia/

明確なテーマを宿す、ユニークな趣向の数々

 英国チューダー・ゴシック様式を基調とした和敬塾本館は、もともとは細川家第16代細川護立侯爵により昭和11(1936)年に建てられた華族邸宅。昭和30(1955)年、前川喜作により男子学生寮 公益財団法人和敬塾が設立された際、細川家より敷地約7,000坪および邸宅(現・本館)を購入し、敷地内に学生寮を建設した。 洋風の外観と反して、屋内には和室や東洋風の装飾が取り入れられ、この時代の特徴を表す折衷デザインとして、平成10(1998)年、東京都より有形文化財の指定を受けている。

シャツ¥140,000 スカート¥160,000 バッグ¥110,000 リング¥102,000 イヤリング¥83,000 ソックス¥17,000 パンプス¥177,000/すべてグッチ(グッチ ジャパン カスタマーサービス TEL:0120-88-1921)

 設計は明治大学本館などに携わった大森茂と臼井弥枝が担当。各部屋の細部には、ユニークな趣向が凝らされている。1階は主に接客空間、2階は日常生活の場として使われていた。

 玄関を入るとまず出迎えるのは大ホールの立派な大階段。手すりには法隆寺五重塔の高欄を模した、卍崩しと呼ばれる中国風のデザインが施されている。客間と応接室を経て続く、半円形にテラスへ突き出す特徴的な部屋は喫煙室。親しい人を通す部屋として使われ、「魚の間」と呼ばれていたそう。現在も残る、天井の回り縁にある投網のおもりを想起させるデザインが、「魚の間」の由来を表している。

「絨毯も大きな窓も大正浪漫のムードを感じさせて最高ですね。ここに座るだけで、当時のゲストの気持ちになれるような気がします(笑)」(ユリアさん)

〈左〉大きな窓も特徴の「魚の間」。〈右〉ベルベットが織り込まれた生地が美しいソファで当時に思いを馳せる。

 内観でチューダー様式が最も表れているのが、「栗の間」と呼ばれる書斎だ。化粧梁、腰パネル、扉、造り付け棚などに名栗仕上げの栗材を使用し、荒々しさを演出している。粗い布に金泥を塗り、暗色の塗装を施した壁と、自然石風の暖炉からは重厚感がにじみ出る。

うねりのある栗材を天井梁に使用。