日本の伝統文化によって醸し続けられる国酒「日本酒」。移り変わる季節やシチュエーションに沿って、毎月厳選した3本を紹介する。今月は、夏を越えて熟成した、まろやかな深みの「ひやおろし」と「秋上がり」をピックアップ。

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 秋の到来を告げる「ひやおろし」と「秋上がり」。ほとんどの酒蔵が出荷する秋の限定酒だが、今回はビジュアルからも季節を感じられる3本をセレクトした。通常の商品は「富久長」、「伊予賀儀屋」、「三井の寿」という銘柄で知られる蔵だが、それぞれ「秋櫻」、「月光」、「ポルチーニ」と秋らしい名前を打ち出し、通常とは違った趣のラベルで展開している点にも注目を。

果実味と円熟感が秋の味覚と好相性の「富久長 ひやおろし 純米吟醸 秋櫻」

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「富久長 ひやおろし 純米吟醸 秋櫻」720ml¥1,500前後

 今や秋の定番となっている「秋櫻(コスモス)」。昨年末に直汲みで瓶詰めし、生のまま味わいを整えた後に瓶火入れをし、適温でじっくりと熟成を経て出荷される。口に含むと、微細なガス感が舌に心地よく弾け、フルーティさを感じつつ柔らかな旨味が広がっていく。地元広島県産のお米で醸しており、“富久長らしい”と愛される味わいとなっている。温度によって多彩な表情を見せてくれるので、初秋には冷酒、晩秋には燗酒という楽しみ方もいいだろう。和紙のラベルが趣を添えている。

 目の前に瀬戸内海が広がる広島県の安芸津に蔵を構える今田酒造本店。世界で唯一「八反草(はったんそう)」を使用し、その味わいを追求している。牡蠣などの魚介の宝庫である地域性から「白麹純米酒 海風土(sea food)」を開発するなど、ユニークな試みも。醸すのは、女性杜氏として活躍する5代目の今田美穂さん。今年春に公開された、日本酒の未来を切り拓く女性3人にスポットライトを当てた映画『カンパイ! 日本酒に恋した女たち』にも登場している。


今田酒造本店
広島県東広島市安芸津町三津3734
TEL:0846-45-0003
https://fukucho.info/

切り絵作家と故郷の四季を表現「伊予賀儀屋 無濾過 純米原酒 月光稲穂 -SEIRYO TSUKIMI-」

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「伊予賀儀屋 無濾過 純米原酒 月光稲穂 -SEIRYO TSUKIMI-」720ml¥1,525

 秋恒例の「月光稲穂」は、地元である西条市出身の、はさみ切り絵作家・塩崎剛さんとタッグを組み、「はなごころ」「天正の涙」「月光稲穂」「石鎚山とオリオン」と、故郷の春夏秋冬をモチーフにした連作のひとつ。「月光稲穂」は、遥か昔、神々しく照らす月光をたよりに農作業を夜遅くまで続ける情景を表現している。すべて愛媛県産の酒米「しずく媛」を愛媛の酵母で醸している純米酒で、秋上がりとして登場するこちらは原酒の瓶火入れ。旨味と酸味のバランスが心地よい。地元では月を愛でながら、里芋の「いもたき鍋」と共に楽しむそう。

“酒は夢と心で造るもの”という理念のもと、文化や人の思いを大切にする成龍酒造。地元では「御代栄」、県内外では主力銘柄「伊予賀儀屋」の名で知られている。愛媛県産の「松山三井」「しずく媛」「ヒノヒカリ」の3種のお米を中心に、蔵内の井戸に自噴する石鎚山系の弱軟水で酒造り。大盛況の蔵開きは、毎年春と秋の開催で、20年目を迎える今秋は10月20日に開催されるので、秋の熟成酒を蔵で味わってみてはいかがだろうか。


成龍酒造
愛媛県西条市周布1301-1
TEL:0898-68-8566
http://www.seiryosyuzo.com