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〈左〉キュヴェ・アルジリテは、この変わった丸いアンフォラにて熟成させる。 〈右〉人懐っこい表情で、熟成について熱く語るブノワさん。

ブノワ:では次に、キュヴェ「バム!(BAM!)」を。このキュヴェの畑は先ほど行った畑のすぐそばで、砂質の成分は少なく、粘土石灰質が多い土壌です。実は、隣の畑だし、同じようにシャルドネを植えようと思ったのですが、うまくいかず、歴史的にこの地に自生していた古代品種を思いきって植えてみたんです。

明日香:どの古代品種を植えたんですか?

ブノワ:すべて白ブドウで、キュヴェの名前の由来となっている、ピノ・ブランとアルバンヌ、そしてプティ・メリエです。

明日香:ピノ・ブランのB、アルバンヌのA、プティ・メリエのMでBAMなんですね! 味わいは、シャルドネ100%のブラン・ド・ブランと比べると、果実味もありチャーミングな感じですね。

ブノワ:ありがとうございます。このベースワインは2007年、2008年、および2009年のブレンドです。2010年に瓶詰めし、2017年半ば以降にデゴルジュマン(澱抜き)をしたので、少なくとも7年半は澱とともに熟成されています。
 では次に「アルジリテ(Argilité)」というキュヴェをテイスティングしましょう。

明日香:キュヴェ名もラベルの書体も、ほかとはちょっと違いますね。

ブノワ:このベースワインは、先ほど地下のカーヴにあった、白っぽい丸いアンフォラで寝かせているんです。2003年のミレジメでシャルドネ100%のブラン・ド・ブランです。 名前の由来ですが、このキュヴェのワインを試飲しているとき、私はいつも口に“粘土質”土壌に由来する味を感じていました。この味わいをキュヴェ名に反映させたいと考え、思いついたのが「アルジリテ」です。ミネラル豊富な味わいのことを“ミネラリテ”と言いますが、“アルジル(粘土を意味するフランス語)”を連想させる味わいなので“アルジリテ”と、造語をつくっちゃいました。

明日香:新しい発想であり、言葉ですね。味わいは、樽ではなくアンフォラで寝かせているぶん、ピュアでフレッシュ、でもほどよく熟成感があり、ライム、またドライフルーツのニュアンスもあり、複雑ですね。

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左から、「ゼロ・ブリュット・ナチュール」「バム!」「アルジリテ」「キュヴェ・ルイ」。

ブノワ:では最後に、プレスティージュ・シャンパーニュである「キュヴェ・ルイ(Cuvée Louis)」を。このベースワインは2002年と2003年のブレンドで、澱とともに15年間寝かせています。

明日香:このキュヴェ・ルイを構成するブドウ品種はなんですか?

ブノワ:東側はシャルドネ、西側はピノ・ノワールの2種類のブドウで構成された特徴的なリューディーのひとつ、「レ・クレヨン」のブドウからで、そのリューディーのテロワールを表現するために、シャルドネとピノ・ノワールを半々にしています。このキュヴェで最も重要なのは、ヴィンテージのブレンドという点ではなく、これら2つの品種のバランスが優れていることです。

明日香:なるほど。まず、香りが本当に豊かですね! 15年以上もの熟成を経て、ユリのような華やかな花の香りもありつつ、ハチミツのような熟成からの香りも豊富です。味わいは、泡もきれいに溶け込んでいて、口中に旨味が広がります。しかも、酸味もしっかりと残っていて、究極にバランスのいいシャンパーニュですね! 香りをかぎながらずっと飲んでいたいです(笑)。
 今日は、ブノワさんのシャンパーニュに対する熱い思いをうかがいながら、また、こんなに素晴らしいシャンパーニュをテイスティングさせていただき、本当にありがとうございました!

明日香:明日香さん、研究結果を披露したいので、また会いに来てくださいね!

杉山明日香
理論物理学博士。ワイン研究家。唎酒師(ききざけし)。
有名予備校で数学講師を務める傍ら、ワインスクール「ASUKA L’ecole du Vin」にてソムリエ資格試験対策講座を主宰。東京・西麻布のワインバー「GOBLIN」、パリの和食店「ENYAA Saké & Champagne」を経営するほか、ワインと日本酒の輸出入業も。東京とパリを2週間ごとに行き来する多忙な日々。著書に『ワインの授業 フランス編』『ワインの授業 イタリア編』『受験のプロに教わるソムリエ試験対策講座』など。

Photos:Yuji Ono Text:Asuka Sugiyama Editor:Kaori Shimura

前編

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