日本を代表する写真家、立木義浩の写真展「Yesterdays 黒と白の狂誌曲(ラプソディ)」が9月29日(土)まで、銀座のイベントスペース「シャネル・ネクサス・ホール」にて開催中だ。「写真には、撮った人の人間性が表れる」と語る同氏の最新作は、はたして、あなたに何を語りかけるだろうか?

モノクロ写真が写し出す、過ぎゆく時の積み重ね

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© CHANEL NEXUS HALL

 日本を代表する写真家・立木義浩の写真展「Yesterdays 黒と白の狂詩曲(ラプソディ)」が銀座のシャネル・ネクサス・ホールで始まった。
 謎めいた4人の女性たちとのフォトセッションの足跡をとらえたモノクロのプリントが、中央の柱に設置されたカラーの風景写真を軸に、会場の四方に展開されている。
 「この1対1の正方形のフォーマットは久しぶりです。かつて『ヴォーグ』や『ハーパーズ バザー』など海外のファッション雑誌では(この画角を)かっこよくトリミングして使っていて、ぼくの少年時代の記憶に刻まれています。いまインスタグラムなどで若い人がこのスタイルを復活させていて、帰ってきたなという感じだね」と立木氏。スクエアの写真9点をシンメトリーに配置したレイアウトは、洗練を感じさせながらも親密さがある。

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 双子の姉妹を含むモデルたちの名前やプロフィールは明かされていないが、時に楚々とした表情を見せ、時に挑発的な眼差しを向ける「現代を生きる女性」の姿は魅力的だ。同じ人物でもメイクやファッション、背景の街並みが変わると、これほど異質な面を見せるものかと思う。いずれも肌の質感がしっとりと美しく、潑剌としたなかにもどこか憂いを含んでいた。
 4人の女性のポートレートとともに展示されている東京の風景にも注目したい。クラシックな喫茶室や長閑な公園、昭和の面影の残る下町や目抜き通りの路上。都市の様相もまた多彩な表情をもつ。
「自然の風景が好きな写真家も多いけど、ぼくは仕事師の手が入って造られた東京の人工的な風景に面白みを感じる。皆さんがそれほど注意して見ていない東京の風景を噛み締めてもらえるとうれしい。自然との対比にも目を向けて、いま世の中で起こっている災害など、いろいろなことに思いをはせてほしい」

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 展覧会のタイトル「Yesterdays」とは、ビートルズの楽曲でなく、ジャズのスタンダード曲から引用された。立木が愛するジャズの世界とも通じ合う「自由」や「哀切」の味わいが、モノクロ写真ならではの陰翳から匂い立つようだ。
 「モノクロが好きなのは、子どもの時分に観た映画体験から。戦後、徳島の片田舎の映画館では、洋画といえば西部劇だったけど、ぼくが好きだったのはエリア・カザン監督の『エデンの東』やマーロン・ブランドが主演した『波止場』とかね。いま写真といえば、なんぼでも撮り直せるものになったけど、モノクロ写真のプリントのよさは未来永劫残っていくと信じています。写真には、時代に沿った写真家の生態や人間性が染み付いている。技術だけでなく、普通の人が気づきにくい無意識のものを普遍的に意識化することが写真なんです」と語る。
 写真家・立木義浩自身の人間的魅力もまた作品の隅々に満ちあふれ、都会の粋な空気を感じさせる写真展である。

立木義浩写真展 Yesterdays 黒と白の狂詩曲(ラプソディ)
~9月29日(土) 12:00~19:30 無休
会場:シャネル・ネクサス・ホール(東京都中央区銀座3-5-3 シャネル銀座ビルディング4F)
入場料:無料

Text:Chie Sumiyoshi Editor:Kaori Shimura

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