世界的に注目をあびるフランスの若手フォトグラファー、ヴァサンタ ヨガナンタンの日本初の個展が、銀座のイベントスペース「シャネル・ネクサス・ホール」にて開催中だ。訪れる鑑賞者を静かに待つのは、インドの古典大叙事詩「ラーマーヤナ」に着想を得て繰り広げられる7つの物語。繊細な色彩美を味わいながらゆったりと巡ってみたい。会期は9月29日(日)まで。

古典と現代に橋を架ける、絹糸の刺繍のような手彩色

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© CHANEL NEXUS HALL

 1985年にスリランカ人の父とフランス人の母のもとに生まれたフランス人フォトグラファー、ヴァサンタ ヨガナンタンの日本初の個展「A Myth of Two Souls(二つの魂の神話)」が開催されている。

 本作の主題、古代インドで編纂されたヒンドゥー教の聖典である長編叙事詩「ラーマーヤナ」は、何世紀にもわたり解釈し直され、マンガやテレビドラマなど形を変えて進化してきた物語。その昔、吟遊詩人たちがインド中の村から村へ、この物語を歌い聴かせて旅をした。

 本プロジェクトでは作家のヨガナンタン自身が、ネパールからインド、スリランカへと、7年以上かけて伝説の物語を辿る12回の旅に出た。現代のインド人が日常の暮らしを営む情景のなかに、彼は「ラーマーヤナ」の神話的風景を見いだす。そこでは地元の人たちが、幼い時分から自らの心象に刻まれてきた「ラーマーヤナ」のシーンを演じている。

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〈左〉第3章の部屋。和紙にプリントする手法が作品の繊細さを際立たせている。〈右〉写真作品とアメコミ風のイラストレーションを対比させた空間も。© CHANEL NEXUS HALL

 ギャラリーに入ると、白い光に満たされた空気が空間を柔和な表情にしていた。作品全体の質感と色感はシルクのようにきめ細かく、透明感のある印象だ。従来の写真展とは明らかに違うこの感覚はなんだろう。

 壮大な本プロジェクトでは、各章ごとに異なる多彩な美学的アプローチと印刷のテクニックが駆使されている。例えば、本展の始まりと終わりの章では、手彩色の人物写真と昔ながらのカラー写真が対話するかたちで配される。アナログの大判カメラによりモノクロで撮影された人物写真には、伝統的な細密画の技術を習得したインド人画家により手彩色が施されている。

 ほかにも、第3章では和紙に印刷した日本版プリントを、第5章ではインクジェットプリントに作家がアクリル絵具で手彩色したものを制作。第6章では、映像作家や作曲家と共同制作した、3チャンネルビデオのインスタレーションを見せる。