児童養護施設育ちの私だからできること

──社会活動なども積極的に取り組んでらっしゃいますね。

 社会活動は自分が一番やりたいことです。幼少時代に家族を失った私は、物心がつく頃から児童養護施設で暮らしていました。ですから、自分の原点でもある児童養護施設への援助はやっていきたいですね。また他国で頑張ろうとしている人たちのためにも、難民の方々の支援活動も続けていくつもりです。もちろん表現することも続けていきたいし、このお仕事で自分の名前に力をつけて、発信力も強めていけたらなと思います。

 最近では、お仕事でご一緒した方々に、「協力したい」と言っていただけることも増えています。さまざまな社会問題を気にかけている人は日本にも多くいるのですが、コミットする場所が少ないのかもしれません。でも誰かがやっていれば集まってくれる。芸能界でもそういう人は増えているし、いい方向に変わっていくのではないでしょうか。

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──本当に前向きですね。

 明日がないと思うと、生きているのが嫌になっちゃう(笑)。私にとってはこうして生きていることが奇跡だし、この仕事ができていることに本当に感謝しています。なかでも特に映画に関われることをありがたく思うのは、私自身が映画によってさまざまなことを学び、何度も救われたから。幼い頃から母の影響でクラシック映画ばかり観ていたのですが、映画は監督や俳優など作品に携わった人が亡くなった後も、世界に影響を与え続けている。そうした可能性を持つものでもありますよね。

──ちなみにサヘルさんの生涯のベスト1は?

 ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の『灼熱の魂』です。実話であることに驚かされましたし、主演女優さんのお芝居も自分に大きな影響を受けました。ぜひみなさんにも観ていただきたいです。

──今後女優として、ひとりの女性として、目指すものはどんなことでしょうか?

 具体的な目標などはありません。ただ児童養護施設の子どもたちに「こんな人になりたい」と思ってもらえるような、いい意味でのロールモデルになりたいです。私が施設を訪ねるときは、施設の方たちが事前に私の経歴を話しているらしいのですが、そうすると「誰かが僕らの手を取ってくれる日が来る?」「あきらめなければお姉ちゃんみたいに何かしらやれることがある?」と、たくさんの子どもたちが聞いてくるんです。無責任に「そうだよ」と言ってはあげられないけれど、彼らが「自分にもできるかも」と思う、エネルギー源になれたら嬉しいです。

──サヘルさん自身のエネルギー源は何でしょう?

 先入観や偏見、あるいは失敗から味わう悔しさでしょうか。「どうせできない」といったネガティブなことを言われるたびに、それを覆し、周囲が驚く様子を見たいと思うんです。そんなことない! 絶対に変えてみせる! という「こんちくしょう精神」ですね(笑)。

 昔は失敗するのが怖かったし、怒られるのもイヤだったんです。でも安全なルートでない、何もない草むらを歩いていたら、ちゃんと別の道に繋がったりすることもあると、歳を重ねて気づきました。道なき道を歩いていくうちに、自分の後ろに新たな道ができていると気づいたことも。その道がさまざまな境遇の子どもたちに開けていたら、すごくいいなと思います。