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〈左〉ガラスレリーフ扉の前で。ラリックからは3案ほどのデザインが提案された。裸の女性像のデザインが第1候補だったが、朝香宮家からの要望により、着衣の女性に変更となった。〈右〉奥に見えるのが、国立セーヴル製陶所で製作された香水塔。黒漆の壁は、金沢の職人によるもので、コンクリートに漆が塗られている。赤壁にはプラチナ箔がちりばめられている。

「つい先週、展覧会を見るために東京都庭園美術館を訪れたばかり。個人的にとても好きな美術館です。パッと見ると洋風ですが、細部をよく見ると和風なところも好みです。和と洋の融合が見事ですよね」(ユリアさん)

 その和洋折衷さは大客室でも窺える。ラパンが内装を設計したゲストルームは、ラリック作によるシャンデリア「ブカレスト」が全体にリズミカルな印象を与えている。ギザギザしたガラスのカッティングは歯車をイメージさせ、これも1920年代の工業化していったパリの時代背景を思わせる。そしてマックス・アングランのエッチング・ガラスを嵌め込んだ扉と呼応するのは、宮内省内匠寮(たくみりょう)が手がけたラジエーターカバー。2階には「青海波(せいかいは)」モチーフのラジエーターカバーもあり、さりげない日本らしさを見つけるのも楽しい。

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〈左〉繊細なガラスで躍動感のあるモチーフを表したシャンデリア「ブカレスト」。〈右〉マックス・アングランのエッチング・ガラスのデザインに合わせて、宮内省内匠寮が制作。ラジエーターカバーは部屋ごとに異なる、隠れた見どころ。
大食堂の天井にはラリック作の照明「パイナップルとザクロ」が。
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お気に入りの2階にて、歴史の流れを想像してみる

 2階のほとんどは宮内省内匠寮が手がけているが、書斎と殿下居間はラパンがデザインしている。円形が特徴の書斎は床に敷かれた絨毯もラパン作だ。戦後は、吉田茂元総理がこの部屋を執務室として使用していたという。そんな歴史の変遷とともに存在していることも、この建物の魅力のひとつだろう。

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「東京都庭園美術館の中でもお気に入りの場所は、2階の北の間とベランダ。北の間は泰山タイルを使った床や光が差し込む明るさが好きですし、反対側のベランダは殿下と妃殿下のお部屋を繋いでいる場所ですが、大理石を市松模様に敷き詰めていてモダンですよね。お二人はこちらでお会いしていたのかな、と想像するのもロマンティックです」(ユリアさん)

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〈左〉ドーム型の天井が印象的な書斎には、建物の歴史が詰まっている。〈右〉夏季の家族団欒の場だった北の間。天窓からも光が差し込む。

 パリ留学中の1923年に事故に遭われ、1925年まで長期滞在を余儀なくされた殿下と看病のため渡欧した妃殿下。滞在中に訪れたパリ万博やラパンたちの作品に刺激を受け、自邸に取り入れたその先見の明と審美眼には感嘆するしかないが、1933年5月の竣工後、同年11月に妃殿下は逝去される。芸術に造詣が深い妃殿下が自らデザインされた、寝室のラジエーターカバーもぜひ見てほしい。新居への思いの深さを感じ取ることができるはずだ。

「当時の最新装飾様式だったアール・デコと日本の意匠は相性がいいのでしょうね。両殿下の高い美意識とセンスにただ驚くばかりです。この保存状態で実際に間近で見られるなんて、とても贅沢ですね」(ユリアさん)

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〈左〉妃殿下寝室には、妃殿下が下絵を描かれたグラジオラスのラジエーターカバーが。〈右〉ドアにつけられた鏡で妃殿下は御髪を整えていたのかもしれません。
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東京都庭園美術館
 
住所:東京都港区白金台5-21-9
TEL:03-5777-8600(ハローダイヤル)
ホームページ:https://www.teien-art-museum.ne.jp/
入館料:展覧会によって異なる。詳しくはホームページにて。
開館時間:10:00〜18:00(入館は17:30まで)
休館日:毎月第2・第4水曜日(祝日の場合は開館、翌日休館)、年末年始

Navigator:Mademoiselle YULIA Photos & Movie:Hiro Nagoya Text:Mika Koyanagi


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マドモアゼル・ユリアが訪ねる 日本の近代建築 Vol.1 自由学園 明日館