「塔頭」という、ミニマルで閑寂幽玄な世界の魅力

 東福寺を訪れた折には、塔頭(たっちゅう)にも出向いてみることをおすすめします。
 たとえば、雪舟が東福寺に参禅する際に泊まっていたとされる塔頭の芬陀院(ふんだいん)。こちらの「鶴亀の庭」には、雪舟の面白い逸話が残っています。雪舟は関白・一條兼良(かねよし)から亀の絵を要請されるも気が進まず、代わりに石組みの亀を作ったのですが、これが夜中に動き出し、慌てた和尚に頼まれた雪舟が甲の部分に大きな石を突き立てると動かなくなったそうです。

「雪舟寺」とも言われる芬陀院の蓬莱式(ほうらいしき)、鶴亀の枯山水(かれさんすい)庭園。イサム・ノグチの友人で、モダニズムの作庭家として知られる重森三玲が、往時の庭を一石の補足もなく復元した。

 塔頭の各院はそれぞれに趣ある庭を有し、いずれの庭も石や樹木などに意味や由来をもち、それを知るのも楽しいことです。
 禅寺の庭は、縁側で坐禅を行うためのものでもあります。坐禅とまではいかないまでも、静かに庭を望み座っていると、時がたつのを忘れてしまいます。 それは“自分探し”というより、“忘我のひと時”なのかもしれません。

木下真理子
木下真理子 書家。雅号は秀翠。6歳より祖父の影響で筆を持ち、専門的な知識と高度な技術を習得するために、書道の研究では第一線として知られている大東文化大学に進学。漢字文化圏である東アジアで受け継がれてきた伝統文化としての書を探求。古典研究の専門分野は「木簡隷」。篆書、隷書、草書、行書、楷書の漢字五書体を書き分け、漢字仮名交じりも書する。近年は現代美術としての書作品の制作にも取り組んでいる。映画『利休にたずねよ』、NHK『にっぽんプレミアム』、『正倉院展』などに関わる題字を数多く担当し、海外プロジェクトやエッセイなどを通して日本の伝統文化の魅力も幅広く伝えている。 公式HP:kinoshitamariko.com/blog

Photos:nanaco Cooperate:Tofukuji, Funda-in


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