科学的に肌を分析する独自のレシピこそ最大の価値。

A:イプサのイメージはどんな?

小田:ほぼ知識ゼロからのスタート。しかも事業戦略本部で台湾や香港など海外事業のオペレーションを担当。すべてが手探りでした。

A:実際に中に入ってみたら?

小田:「実によくできてるな」と。科学的な側面から肌を測定し、最後に製品につなげて12本(当時)の中から肌に合う1本を選ぶ。こんなブランドはほかにありません。

A:〝化粧液〞という打ち出しは、たしかイプサが初めてでした?

小田:レシピを創るところと会計が分かれている販売方法もユニークで斬新。自分に合うものを選んでくれるレシピのシステムはユニバーサルで、海外でも受け入れられました。ただ、それぞれのアイデアはいいけど広がりがないよね、と迷いが生まれ、厳しい時代も。その経験も含め成長できたのが、僕のイプサ第1期です。

A:第1期、というのはその後、資生堂本体に戻られたからですね。

小田:2007年から本体の経営企画室に。グローバルブランドなどの海外戦略も担当し、学んだことも大きかったのですが、もう一度地上戦に復帰したいという思いが沸々と。「イプサに戻りたい」と希望を出しました。

A:念願叶って社長として復帰。

小田:まずはこの素晴らしいブランドを世界に伝えたい。そして僕が社会人として成長する20~30代の10年間、背中を押し続け育ててくれたイプサに恩返ししたい気持ちもありました。イプサは、故郷のない僕がみつけた故郷のような存在。自分の人生とイプサがぴたっとハマったんです。

A:愛が深い! でもその愛が通じたのか、今は絶好調、海外での評判もよいご様子で。

小田:先輩たちがコンセプトをぶらさずやってきてくれたおかげです。2004年から中国でもスタートしましたが、最初は理解してもらうのがなかなか難しくて。でも最近は、新しい世代のおしゃれな人たちの支持が高い。ミニマルな感覚がマッチしたようです。

A:日本での絶好調の理由は?

小田:ペルソナを決めたことが大きいですね。20~30代をコアターゲットに、手を広げすぎず基本のレシピを伝える。大学生の娘も「興味がある」と言っています。イプサライザーを使って水分と皮脂量をはじめ、さまざまな肌データに基づく解析結果を丁寧に説明。ほかのどこにも負けない、このレシピこそ、イプサ最大の価値です。

A:売っているのは商品ではなく、レシピの体験価値。今っぽい発想ですね。青山に路面店もオープンし、さてこの先は?

小田:2018年の1月にここに降り立ち、僕の役割を考えました。基本を守りつつ進化もしなくちゃいけない。僕がすべきは、原点と未来をつなぐコネクターになることではないか? と。

A:この先、化粧品以外に進出する可能性も?

小田:測定と科学的根拠をベースに、食事などインナーバランスの領域も視野に入れています。化粧品のように、一人ひとりに合わせたオーダーメイドな方向で提案できると面白いかも。そのためには、レシピストの教育も不可欠。イプサアオヤマを利用して、レシピを提供するだけの一方通行ではなく、アイデアを募って相互作用が可能な空間にできたらなと。イプサとお客様で新しい価値を共創したいと思っています。

A:すべてイプサらしく、ですね。

科学的分析から肌に合う1本を選ぶメタボライザー(ME)。
「肌測定器イプサライザーを使って、肌の状態を科学的に分析。そのデータに基づき、レシピストが17種のメタボライザーから今の肌に合う1本を提案。このレシピこそイプサの原点です。初代は1986年、僕が知って衝撃を受けたときは3代目。進化を続けて今は8代目」。肌に必要な機能を凝縮した化粧液、ME(2010年メタボライザーより改称。全17種)¥5,500~10,000/イプサ
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ロングセラーの化粧水とベストセラーの毛穴ケア。
「ザ・タイムR アクアは、僕のイプサ第1期にデビューした化粧水。ブランドがちょっと厳しかった時代に新しいお客様を増やしてくれました。自分でもずっとリピートしていますが、中身だけでなくパッケージも素晴らしい。あと、毛穴ケアも愛用中」。〈左から〉ポアスキンケアステップス(ローション6ml/バーム20g)¥4,500、ザ・タイムR アクア〈医薬部外品〉200ml ¥4,000/ともにイプサ
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JUN ODA
JUN ODA 1972年東京生まれ。小学校5年から高校3年までイギリスで生活。帰国し立教大学法学部に入学。卒業後、94年に資生堂入社。静岡東支店での営業担当、タイにて1年間の研修を経て、97年からイプサに。2007年、資生堂に戻り経営企画部などを経て、18年より現職。

Photos:Kiyohide Hori Text:Eri Kataoka Edit:Aya Aso

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