メゾンの「伝統」に新風を吹き込む「革新」の担い手

 6人の精鋭チームをまとめるアーティスティック・ディレクターとして、またテタンジェの想いを伝えるアンバサドリスとして、めまぐるしく活動するヴィタリーさん。その日々は、一度として同じ繰り返しがない。「一日に何度も会議をこなし、ガラやレセプションに出席したり、プレスにメッセージを発信したりと、やることは山積み。しかも、その間も常に新しいアイディアを考え続けなくてはなりません」──そう言いながら、その表情は充足感に満ちあふれている。メゾンのために働くことが楽しくて仕方ない、というように。

 テタンジェは今、「伝統と革新」をポリシーに掲げている。ブランドが育んできた270年以上の「伝統」を礎に、新しいアイディアで「革新」をもたらすのもヴィタリーさんの使命だ。その最たる例が、彼女が入社してすぐ提案した、アート性の高いギフトボックスの導入だ。「伝統的な箱のサイズは変えずに、シャンパーニュの泡をあしらった意匠でメゾンの価値観やメッセージを伝えるようにしました。実は、印刷にも革新的な技術を使っているんですよ」

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〈左〉左から「テタンジェ・コレクション・セバスチャン・サルガド2008」のボックス&ボトル、「ノクターン スリーヴァー」、「ノクターン スリーヴァー ロゼ」。〈右〉ギフトボックス。

 人気銘柄「ノクターン スリーヴァー」のボトルデザインを手がけたのも彼女だ。「ノクターンは夜のシャンパーニュと位置づけていることから、夜景をイメージしたデザインに。夜の街にもシャンパーニュの泡にも見える仕掛けにすることで、ノクターンのアイデンティティをボトルで表現しました」とヴィタリーさん。こうしたアイディアは、世界中を旅し、人々と話をするなかで自然と湧き出てくるのだという。

ヴィンテージを1本の芸術品に仕立て上げる

「偉大なシャンパーニュは偉大なアートである」と考えるテタンジェ。それを見事に体現したのが、選び抜かれたヴィンテージと著名アーティストとのコラボレーションによる「テタンジェ・コレクション」だ。1983年以来、35年間でつくられたのはわずか13種類。その13作目を手がけたのも、ヴィタリーさんである。

希少なコレクションアイテムとしても人気が高い、「テタンジェ・コレクション」。ヴィタリーさんが手がけた13作目の「セバスチャン・サルガド2008」も、すでに在庫僅少に。

「今回起用したのは、ブラジル出身の写真家であるセバスチャン・サルガド氏。ナミビアの渓谷で撮影された豹の写真を使っています。この写真を見たとき、シンプルな力強さにとても感銘を受けました。そこには動物がいて、水がある。水がなければ人間は存在し得ないし、シャンパーニュも生まれない。人生の大切なことが、この一枚に凝縮されているのだと感じたのです」

 オリジナルの写真が持つモノクロームの静謐さを損なわないよう、キャンバスとなるボトルカラーにはピアノブラックを採用。ボトルシールやボックスにも深みのある色と手触りの素材を選んだ。「サルガドさんと相談しながら、細かいところまで一緒につくり込みました。ボトルはもちろん、中身のシャンパーニュも手間と愛情をかけて育てた自信作です」