理論物理学の博士号をもち、有名進学予備校で数学の講師を務める一方、自ら主宰するソムリエスクールで教鞭を執るほか、飲食店経営やワインと日本酒の輸出入業も行うなど、ユニークかつパワフルに活動するワイン研究家、杉山明日香さん。本連載では、彼女が毎月視察に訪れるというシャンパーニュ地方の“今”にフォーカス。

私のワインビジネスを一歩進めるきっかけとなったシャンパーニュ

アルコール発酵中のピノ・ノワール。
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 ――後編は、ぺルネ・エ・ぺルネの当主であるクルトさん、マリオンさん夫妻が経営するレストランで、シャンパーニュをテイスティングしながらお話をお伺いするところから。

明日香:カーヴ(レストランの目の前)のほうから、ブドウと酵母の香りがしますね!

クルト:数日前に収穫したピノ・ノワールが、今ちょうどアルコール発酵中なんです。いいチャンスだから、先にそっちをテイスティングしますか?

明日香:やった~。発酵中のワインを飲むのは初めてなので、ぜひ!!

発酵途中のワインをテイスティング。
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クルト:(カーヴの地上階の醸造所へ移動。発酵中のピノ・ノワールをかき混ぜながら)発酵中は、このように一日に数回、攪拌させています。

明日香:主な目的は?

クルト:アルコール発酵中は、二酸化炭素が発生して、その炭酸ガスにより、一緒に醸(かも)しているブドウの皮や種が上部に押しやられてしまいます。それらを液中に戻してあげて、成分抽出を促すためです。また、酵母の働きを助けるための酸素供給の目的もあります。

明日香:なるほど。機械での攪拌(=ルモンタージュ)は見たことがあったけど、実際に手でかき回している(=ピジャージュ)のは初めてみました!

クルト:うちみたいに小さなドメーヌだと、手作業の人も多いかな(笑)。

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濁りのある発酵途中のワイン。アンボネのピノ・ノワール(左)とヴェルテュのシャルドネ(右)。

明日香:(クルトさんが発酵槽から直接注いだワインを受け取って)本当に酵母の香りが漂ってますね! しかも、それと同時にピノ・ノワールの赤い果実の香りが!!

クルト:そうそう。でも、まだ発酵中なのでアルコール度数も全然高くないし、どちらかというとワインというよりブドウジュースって感じでしょう?

明日香:そのとおりですね。でも美味しい! 2018年はどのような年でしたか?

クルト:今年は、自分の経験のなかでも最も素晴らしい収穫ができたと思います。収量も去年の3割増しくらいで、おそらくシャンパーニュ地方としても、質量ともに1990年以来のグレートヴィンテージになると思っています。今年のミレジメがどんなふうになるのか、今から造るのが楽しみです。