理論物理学の博士号をもち、有名進学予備校で数学の講師を務める一方、自ら主宰するソムリエスクールで教鞭を執るほか、飲食店経営やワインと日本酒の輸出入業も行うなど、ユニークかつパワフルに活動するワイン研究家、杉山明日香さん。本連載では、彼女が毎月視察に訪れるというシャンパーニュ地方の新潮流にフォーカス。

女性ならではの視点から、繊細で気品のある味わいを表現

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現当主キャロルさんと、摘みたてのシャルドネを味見。

 みなさん、こんにちは。「杉山明日香のシャンパーニュ紀行」第15回の訪問先は、シャンパーニュ地方の街エペルネから車で南に25分ほど、コート・デ・ブラン地区のプルミエ・クリュ、ヴェルテュ村に拠を構える「デュヴァル・ルロワ」です。大手グラン・メゾンの中でも数少ない家族経営であるこのハウスを率いるのは、シャンパーニュでも有名な女性社長。亡きご主人の遺志を継いで6代目当主となったキャロル・デュヴァル=ルロワさんにお話を伺いました。

明日香:こんにちは。今日は、キャロルさんにお目にかかるのをとても楽しみにしていました!

キャロル:ありがとうございます。私も楽しみにしていましたよ。今、ちょうど収穫中なので、まずは畑に行きましょう!

明日香:収穫でお忙しい中、案内してくださってありがとうございます!

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〈左〉収穫は10人ほどのチームごとに行う。女性も多い。 〈右〉収穫されたブドウはケースごとに重さが量られたあと、いちばん近くの圧搾機に運ばれる。

明日香:(畑にて)ブドウが本当に美味しそうに実ってますね。

キャロル:ここはヴォワプルーというプルミエ・クリュで、私たちの拠点であるヴェルテュ村の隣に位置する、シャルドネのみの畑です。明日香さん、味見してみますか?

明日香:みずみずしくて、また甘すぎず、酸っぱすぎず、本当に美味しいシャルドネですね。このブドウからできるシャンパーニュの味わいを想像しただけでワクワクします。
「デュヴァル・ルロワ」は大手グランメゾンであり、広大なブドウ畑を所有していらっしゃると思いますが、収穫はどのようにされていらっしゃるんですか?

キャロル:デュヴァル・ルロワの自社畑は200haにも及びます。シャンパーニュ地方ではブドウは手摘みが義務ですし、収穫のときはかなりの人手が必要なので、2週間という短期契約の作業員の方たちも多くいます。今日はこの畑、明日はまた別の村のあの畑、という感じで、栽培長の指示のもと、10人ちょっとのチームごとに分かれて収穫をしています。今この畑にいるチームは、毎年ルーマニアから来てくれているチームなんですよ。

明日香:毎年、という方もいらっしゃるんですね。総勢何人ぐらいで収穫されるんですか?

キャロル:200人近くいると思います。

明日香:やはり、かなり多いですね! それだけ多いと、人材募集や管理だけでも大変な仕事ですよね。

キャロル:シャンパーニュ地方には、収穫時の人材派遣エージェントがあり、労働ビザなどもすべて含めて管理してくれるので、基本的にはそちらにお願いしています。

明日香:他のワイン産地ではあまり聞かない、シャンパーニュ地方ならではのエージェントですね。