明治や大正、昭和初期に建てられた建造物には、現代の建物とは異なる魅力がある。DJ、モデル、ファッションデザイナーとして多彩な顔を持つMademoiselle YULIA(マドモアゼル・ユリア)が、そんな近代建築をナビゲート。今回は、文京区音羽にある鳩山会館を訪れた。

MADEMOISELLE YULIA
東京生まれ。DJやシンガー、モデル、ブランド“Growing Pains”のデザイナーとして活躍。国内外のコレクションのフロントロウを飾る、ファッションアイコンとしての顔も持つ。また、今年4月から大学で日本の伝統文化について学んでいる。大正時代や歌舞伎、着物などに造詣が深い。http://yulia.tokyo/yulia/

大正ロマンが薫る、イギリス風の外観

 音羽御殿とも呼ばれるバラとステンドグラスに彩られた鳩山会館は、関東大震災の翌年、大正13(1924)年に鳩山一郎によって建てられた。鳩山家は、元衆議院議長の和夫、総理大臣となった一郎、外務大臣を務めた威一郎、元総理大臣であり現当主の友紀夫(由紀夫)、文部大臣などを歴任した邦夫と4代続けて政治家を生み出した、まさに華麗なる一族。広大な庭にイギリス風の外観をもつこの邸宅は、平成8(1996)年に大規模な修復工事が行われ、一般に公開されるようになった。

当時としては珍しい鉄筋コンクリート造を採用。大きな窓は、1階の曲線と2階の直線とで美しい調和をなしている。

 設計を担当したのは、一郎の親友だった建築家の岡田信一郎。歌舞伎座(1924年)、明治生命館(1934年)など、日本の近代建築史において重要な建築物を手がけた名手だ。個人の邸宅ということも手伝ってか、荘厳な印象の前述2つの建物とは異なり、開放感があるのが特徴。軽快で優雅な新古典主義様式のアダム・スタイルを取り入れた応接間、大きな窓からたくさんの光が差し込む1階サンルームは、非常に明るくオープンだ。

「明治生命館は好きな建物なのでよく訪れます。同じ建築家の岡田信一郎さんが手がけた鳩山会館は、まさにイギリス風の洋館という感じで、少女マンガの世界に迷い込んだみたい。とてもクラシックですよね」(ユリアさん)

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〈左〉入ってすぐの第一応接間は、家族がゲストと歓談する部屋として使用されていた。 〈右〉庭に面したサンルームは、南向きで光がたっぷりと入る。吉田茂元首相が訪ねてきた際には、この部屋で会談したのだとか。

 さて、建物の中に入ってみよう。
 車寄せのアーチをくぐり、バラのレリーフが施されたドアを開けると、大理石の階段が出迎える。すぐ右手には第一応接間、第二応接間、食堂と続く。3つの部屋はひとつの空間のように繋がっているが、そこには秘密が。それぞれのドアには特殊な蝶番が使用されており、折りたためるようになっているのだ。加えて、サンルームから庭へ出る扉はドアではなく、引き戸。イギリス様式の外観や先進的な鉄筋コンクリート造に、さりげなく潜む和風のディテールがユニークだ。

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〈左〉車寄せのアーチから玄関ホールへ。〈中〉階段を上がったら天井を見上げて。電球が唐草模様のような影をつくり幻想的。〈右〉扉をぐるりと回転させ、たたみ込める特殊な蝶番。これにより、各応接間を開け放つことができる。