理論物理学の博士号をもち、有名進学予備校で数学の講師を務める一方、自ら主宰するソムリエスクールで教鞭を執るほか、飲食店経営やワインと日本酒の輸出入業も行うなど、ユニークかつパワフルに活動するワイン研究家、杉山明日香さん。本連載では、彼女が毎月視察に訪れるというシャンパーニュ地方の“今”にフォーカス。

畑の真ん中で、デゴルジュマン(澱抜き)を初体験!

[画像のクリックで拡大表示]
種まで十分に熟したムニエ種のブドウの房。そのまま食べても美味しい。

 ――みなさん、こんにちは! 連載第4回は、ヴァレ・ド・ラ・マルヌ地区を訪れました。この地区はシャンパーニュ地方の中部を東西に流れるマルヌ川に沿って広がる地域。ピノ・ムニエという黒ブドウの産地として有名です。今回はこの地区のCrouttes-sur-Marne(クルット・シュル・マルヌ)村に位置する、ムニエ主体のシャンパーニュの中で私が最も好きな造り手さんのひとつである「フランソワーズ・ベデル」をご案内いたします。
 訪れたときは、ちょうど収穫が終わったころ。ブドウ畑で待ち合わせをして、現当主ヴァンサン・ベデルさんへのインタビューが始まりました。

明日香:今年はドメーヌの60周年アニバーサリーイヤーと伺いました。おめでとうございます!

ヴァンサン:ありがとうございます。当ドメーヌの初代当主はフェルナンド・ベデルとマリー・ルイーズ・ベデルの二人で、今から60年前にこの地でブドウ栽培を始めました。私の母で、ドメーヌ名にもなっているフランソワーズは2代目。私は3代目で、4代目は将来的に私の子どもたちとなる予定です(笑)。彼らが継いでくれればだけどね。

明日香:そうですね! それにしても、このエリアのブドウ畑は本当にマルヌ川のそばから広がっているんですね。ここは、ムニエの畑ですか?

ヴァンサン:そうです。このムニエを見てください。小粒で、プリッと美味しそうでしょう?

明日香:(一粒口に含んで)本当にジューシーで、ほんのりとした甘みが口中に広がりますね!

ヴァンサン:この葉っぱも見て!

明日香:葉の表面が白くなってますね。

[画像のクリックで拡大表示]
葉の表面が白く粉がふいたようになるのが、ムニエの特徴。ちなみに調理法の「ムニエル」も同じ語源。

ヴァンサン:ムニエには「粉屋」という意味があり、その名のとおり、葉の表面が粉に覆われているように見えるでしょう? なので、ブドウ畑でどの品種か見極めるとき、ムニエはこの特徴的な葉っぱのおかげですぐにわかるんですよ。