明日香:ヴァンサンさんの、ビオディナミに対する思いを聞かせてください。

ヴァンサン:自然なワイン造りは、造る側のライフスタイルや人生観はもちろん、常に新しい知識に敏感であるかどうかなど、技術的なことだけでなく、とても精神的なものまで含め、すべてが反映されます。
 ワインは生き物です。ブドウそのものの生命力はもちろん、土壌やその年の天候が与えてくれたエネルギーなどのすべてがその証しとして感じられるような、生きたワインを造らなければならないと思っています。

明日香:自然の与えてくれたエネルギーとブドウの生命力が溶け込んだシャンパーニュだなんて、本当にステキです!

ヴァンサン:ライフスタイル、と言いましたが、本当にここがポイントでもあるんです。ただマニュアルに沿っただけのワイン造りがよくないように、日々の暮らしにも同じことがいえます。常に立ち止まって、敏感にそのときどきのコンディションを感じながら、変化に合わせて無理のないように整えていくこと。これはワイン造りだけでなく、人生を送るうえでもとても重要です。
 造り手である私たちは特に、健やかで幸福であることや、ときに幸運であることによるエネルギーをワイン造りと共有していかなくてはなりません。このバランスはとても大事です。

明日香:ビオディナミの概念はとても哲学的ですよね。忙しく日々を過ごしていると、立ち止まって暮らしを見直すことは、つい後回しになりがちです。考えさせられますね。

ヴァンサン:そうですね。明日香さんは毎月、日本とフランスを行き来して本当に忙しいと聞いています。でも、ぜひ大事にしてください!

明日香:はい!(笑)

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〈左〉テイスティングルームにて。ワインの造りや味わいについて、ヴァンサンさんが熱く語ってくれる。〈右〉左から、Dis,“Vin Secret”(ディ・ヴァン・セクレ)、Comme Autrefois(コム・オートルフォワ)、Entre Ciel et Terre(アントル・シエル・エ・テール)。

ヴァンサン:喉も渇いてきたし、そろそろテイスティングをしましょうか? まずは「ディ・ヴァン・セクレ」。ちょうど、このボックスの下の段の左から2番目にあるものです。このキュヴェ名は、ディモアがフランス語で「伝えてくれ」という意味なのですが、「ディモア・ヴァン・セクレ」で「ワインの秘密を教えて」、「ディヴァン」が「神が造った秘密」、「ヴァン・セクレ」が「秘密にされているワイン」と、3つの意味が含まれています。ベースワインは2009年のものが主体で、残りはそれより古いもの。ムニエ90%、ピノ・ノワール5%、シャルドネ5%の割合で、瓶内熟成は9年です。

明日香:まず熟成から来る、ハチミツのような、やさしい甘い香りがします。その後に、レモンをはじめとする柑橘の香りが。味わいは、ムニエの心地よい果実味と適度な酸味とが相まって、熟成しているにもかかわらず、どこか爽やかなところが素晴らしいです。 9年も熟成されていたので、もっと濃縮された味わいを想像していたのですが、味わってみるとイメージとかなり違う、というところもまさしくその名のとおり、ワインが秘密を教えてくれたような感じですね!

ヴァンサン:ありがとうございます! 次のキュヴェは「コム・オートルフォワ2004」。この上の段の、コルクがヒモでくくられたシャンパーニュです。

明日香:昔はコルクを、金具ではなくこのようにヒモでくくりつけていたんですよね?

ヴァンサン:そうなんです。このキュヴェ名はまさしく「昔のように」という意味で、樽での発酵と熟成、コルク栓による瓶内熟成が、昔の伝統的シャンパーニュの製法であることから名づけられました。せっかくなので、地下のカーヴでテイスティングをしましょう!