理論物理学の博士号をもち、有名進学予備校で数学の講師を務める一方、自ら主宰するソムリエスクールで教鞭を執るほか、飲食店経営やワインと日本酒の輸出入業も行うなど、ユニークかつパワフルに活動するワイン研究家、杉山明日香さん。本連載では、彼女が毎月視察に訪れるというシャンパーニュ地方の新潮流にフォーカス。

なんと収穫の手伝いがきっかけで、結婚したカップルも

[画像のクリックで拡大表示]
〈左〉15haある畑の収穫は十数人がかりで、約10日以上も続く。 〈右〉よく熟したキュミエール村の畑のピノ・ノワール。

 みなさん、こんにちは。「杉山明日香のシャンパーニュ紀行」第16回は、シャンパーニュ地方のエペルネから車ですぐ、ヴァレ・ド・ラ・マルヌ地区アイ村の「ドメーヌ・ジョフロワ」を訪問しました。前編では、ジョフロワのいちばんの拠点であるキュミエール村の畑を前当主のルネ・ジョフロワさんにご案内いただき、現当主のジャン・バティスト・ジョフロワさんにドメーヌの歴史などについて伺いました。

明日香:ジャン・バティストさん、こんにちは。今日は収穫中のお忙しいときにありがとうございます!

ジャン・バティスト:明日香さん、お久しぶり! さっそくですが、父がキュミエール村の畑で待っているので行きましょう。

ルネ:(キュミエールの畑にて)はじめまして、私がジャン・バティストの父のルネです。

明日香:はじめまして、今日はよろしくお願いします。ルネさんは毎日、畑に出ていらっしゃるんですか?

ルネ:私は現場からは退いているんですが、毎日、畑作業の休憩時間にコーヒーを届けがてら、みんなに会いに来ています。

明日香:この風景の中でのコーヒーブレイクって素敵ですね。

ルネ:今日は、このキュミエールの畑のピノ・ノワールを収穫しています。十数人でいっぺんに収穫するんですが、毎年この時期に、ヨーロッパのほかの国々からも何人か手伝いに来てくれています。なんと、ここで毎年、収穫で会っているうちに、それがきっかけで結婚したカップルもいるんですよ!(笑)

明日香:すごい、ジョフロワのシャンパーニュが結んだご縁ですね! ドメーヌ全体で畑の大きさはどれくらいでしょうか?

ルネ:現在15haの広さがあり、もともとドメーヌがあったキュミエール村から現在のドメーヌがあるアイ村の間にリューディ(小区画)が集中しています。23%がシャルドネ、45%がピノ・ノワール、32%がムニエの畑です。私の父の時代には9ha弱だったんですが、私と息子のジャン・バティストの時代で、かなり大きくなりましたね。

明日香:畑を広げるのはそう簡単にできることではないですし、いろいろなご苦労があったのでしょうね。今年の収穫はどうですか?

ルネ:収穫量は平均の7割ぐらいと少ないです。ただ、今年は非常に質の高いブドウが実っています。

明日香:みなさん、そうおっしゃる方が多いので、2019年のミレジメのシャンパーニュが本当に楽しみですね。

[画像のクリックで拡大表示]
前当主のルネ・ジョフロワさん。

ジャン・バティスト:(ドメーヌの醸造所にて)これは、シャンパーニュ地方の伝統的圧搾機で、中央から両側にこの半円の板を下ろし、上の大きなネジを回して圧力を調整するんです。ちょうど、今朝収穫したシャルドネとピノ・ノワールを一緒に圧搾しています。