業界的計算抜きで映像化した、“やんちゃ”で“熱い”作品

──今回の作品は、原作にきわめて忠実に映像化されている気がしました。

 そうですね。ほぼ原作そのままですが、ラスト近くの1シーンを、物語に起伏が必要だなと思い、僕が自分で映画用に書き足したシーンがあります。出来上がった作品では、その場面が映画の核のようなものになったと、武正晴監督は言ってくれました。

 僕は小説を映像化するときに、必ずしも原作どおりにつくる必要はないと思うんです。大事なのはどうとらえているか。ざっくりした脚本の段階で、その人が作品の核をとらえられているかどうかは、大体わかります。『銃』のときはドンピシャでした。

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リリー・フランキーさんは、主人公トオルの前に立ちはだかる「最強の敵」ともいえる刑事役。二人が対峙するこのシーンから、ストーリーは大きく動いていく。

──本作品に加え、『去年の冬、君と別れ』『悪と仮面のルール』と、このところ映画化作品が続いていますね。

 幸いなことですが、これまでの自分の作品の映像化は、すべて嬉しいものになっています。映画業界って、とにかく売れそうな映画をつくって、ある程度利益を得られれば……というところなのだと思っていましたが、それは勘違いでしたね。映像化しにくい僕の原作をメジャー配給でつくるとか、ほぼ全編モノクロでつくるとか、熱くてやんちゃな人も多くて(笑)。逆に「ただつくります」みたいなオファーは断っています。

──『銃』のプロデューサー奥山和由さん(『うなぎ』でカンヌ映画祭パルム・ドール受賞)、監督の武正晴さん(『百円の恋』で日本アカデミー賞作品賞、監督賞など受賞)もそんな方だったんですね。

 奥山和由さんが声をかけくれたとき、すでに別ルートで映像化の企画がまとまりつつあったんです。でも奥山さんは諦めず、「じゃあまずは『火』(文庫版『銃』に併録されている短編)をやらせてくれ」と。それが桃井かおりさん監督・主演という、僕が思いもしない形になり……そういうのってこっちも楽しいですよね。

 奥山さんはこれだけの館数でこれだけの観客が入れば……といった計算をまったくしないように見える。それがプロデューサーとしていいのかどうかわかりませんが(笑)、人間として、映画人として非常に魅力的だし、もちろんそれでいて実績もすさまじいものをもっている。

 監督の武さんも、すさまじいものがありましたね。僕が思う以上のものが頭の中にあって、こちらが疑問を投げると、すぐに的確な答えが返ってくる。そういう人たちが若い世代の俳優たちを全面バックアップして映画をつくっている。ああ、いい業界だなと思いました。