道端で拳銃を拾ったことをきっかけに、スリリングに変化してゆく大学生トオルの日常を描いた映画『銃』。原作は芥川賞受賞作家・中村文則さんが17年前に書いたデビュー作だ。『去年の冬、君と別れ』『悪と仮面のルール』など、ここ最近、著作の映画化が続く中村さん。原作者として映画作品に寄せる思い、そして『銃』から最新刊『その道の先に消える』まで、時代を超えて貫かれる中村さんの思いとは、いったいどんなものだろうか。

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原作の危うい魅力を体現する、村上虹郎の存在感

──映画化された作品について率直な感想をお聞かせください。

 まずは「スゴいモノを見たな」と感じました。原作者だし脚本もチェックしているんですが、それでも驚く。映像演出の力で、画面に引き込まれてしまうんです。DVDで見る映画も楽しいですが、やっぱり大きな画面で見ることでしか味わえない、いわゆる映画体験ってこういうものだなというのを久々に味わいました。ハラハラするサスペンス的な面もありますし、モノローグで赤裸々に語られる主人公トオルの心の内に、「男ってこうなんだ……」と感じる女性もいるでしょうね。ポップコーンを食べながら、っていう映画じゃないかもしれない(笑)。でも、見たら忘れられない映画になると思います。

──『銃』はこれまでにも何度か、映画化の話が持ち上がっていたそうですね。

 このタイミングで映画化が実現したのはたまたまだったのですが、これから映画界を担うであろう村上虹郎さんの20歳と重なり、彼に主演してもらえたことは、結果論ですがすごくよかった。主演が決まって彼の全出演作を拝見しましたが、その中でこの映画が、ちょっと変な言い方ですが、もっとも「俳優・村上虹郎」だと思いました。

──村上さんの良さはどんなところですか?

 一言で表現するのはなかなか難しいですが、存在感と言えばいいでしょうか。スクリーンを通しても、実際にお会いしても、これからすごくなる人のエネルギーみたいなものが全身から出ているような。俗っぽい言い方をするとオーラというのでしょうが、もっと本質的な、人間として底深いものを感じるというか。

 トオルという役は、外面と内面、そして無意識の三層構造になった複雑なところがあるのですが、村上さんがそれを完全に理解していたことには、非常に驚かされましたし、感心しました。

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主演を務めた村上虹郎さん。プロデューサーの奥山和由さんは、「映画化のためには彼でなければならなかった」と断言。大胆不敵さと脆さを同時に醸し出す演技が、見る者を主人公の心象に寄り添わせる。

──何に使うわけでもなく、「銃」を手にしただけ。でもトオルの退屈な日常がスリリングに変わっていく様子が描かれている。「銃」は“ここではないどこか”に連れていってくれそうなもの、のように思えました。

 村上さんは「これは男を取り巻く女性の話だと思う」と言っていて、ああ、そうだな、と思いました。拳銃も女性のように思える、と。村上さんが自分で演じ、物語の真ん中に立ってみて気付いたことなんだろうと思います。

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