1890年、日本の迎賓館として誕生した帝国ホテル2020年11月3日に開業130周年を迎えるにあたり、2021年3月31日まで、特別なイベントや商品を展開している。東京料理長として多彩な試みを展開する、杉本 雄さんに思いを聞いた。

30歳の若返りとなる東京料理長就任に思うこと

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帝国ホテル 東京料理長・杉本 雄氏。1980年、千葉県生まれ。1999年、帝国ホテル入社後、渡仏。2006年からパリ「ル・ムーリス」で研鑽を積む。2017年に帰国後、帝国ホテルに再入社。宴会シェフを経て、2019年4月に第14代帝国ホテル 東京料理長に就任。

――今年4月、帝国ホテル 東京料理長に就任されましたが、杉本さんにとって帝国ホテルとは、どのような存在ですか?

 初めて訪れたのは、小学生の頃。父の友人の結婚式でした。ふかふかの絨毯(じゅうたん)にグランドピアノ、シャンデリアなど夢のような空間。その後もツアーコンダクターの仕事をしていた父から度々話を聞き、自然と憧れを抱くように。そして帝国ホテルに入社すると、メインダイニングの「レ セゾン」で開催された、本場フランス人シェフを招聘した催事に衝撃を受けました。シェフの圧倒的な存在感、美的センス、すべてに感銘を受けたのです。それをきっかけに本場のフランスで学びたいという気持ちが高まりました。その後、一度は帝国ホテルを離れるのですが、再び自分の基礎となる場所に戻ってきました。私にとって帝国ホテルは“原点”だと感じています。私はよく自転車にたとえます。自転車は一度しっかりと乗り方を覚えたら、数年間乗っていない期間があってもすぐに感覚を取り戻せるもの。帝国ホテルは私にとって、料理の基礎、ベースになるものを教わった場所です。

――ご自身が外国催事を中心となって開催する立場となった今、大切にしていることを教えてください。

 前任の田中健一郎元総料理長は68歳。私は38歳なので、30歳の若返りとなります。私としては若さを生かし、スピード感をもって物事に取り組んでいきたいと思います。また、現場の声をしっかり把握できるようコミュニケーションを取っていくことも大切に考えています。新たな企画やフェアを行うことで、担当する調理やレストランスタッフと様々な意見交換をできる機会が増えることは、私にとっても非常に重要です。

「歴史にふさわしく 未来にふさわしく」をスローガンに

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就任以来、次々と新たな試みを打ち出している杉本さん。ホテル内のレストランに立つことは少ないが、クリスマスケーキからフランス料理のフルコースまで、独自のメニューを多彩に展開する。

――130周年という記念すべき節目を迎え「歴史にふさわしく 未来にふさわしく」というスローガンを掲げています。まず「歴史」について、杉本さんはどのように考えていますか?

 今回の就任が30歳の若返りだとお伝えしましたが、初代総料理長の村上信夫から2代目総料理長の田中健一郎へのバトンタッチも、およそ30歳の若返りでした。帝国ホテルは、積み重ねてきた歴史のなかで常に未来を見据え、そういったチャレンジを繰り返してきたDNAを持っているといえます。1958年には、日本初となるブフェスタイルの「インペリアルバイキング」を開店するなど、日本初、ホテル業界初となる歴史も多く刻んできました。歴史があることで、保守的なイメージをお持ちの方も多いかと思いますが、実は常に革新的であり、それは現在もこれからも変わりません。

――続いて、未来に向けては、いかがでしょうか?

 時代に合わせ、現代的なスタイルを取り入れていくことも大切だと考えています。例えば、ベジタリアンやビーガンの方でも楽しんでいただけるフランス料理のコースなども必要になるでしょう。またいずれは、メニュー開発専用のキッチンをホテル内に設けられたらいいですね。他にも、フードロスなどの社会的な問題にも真摯に取り組んでいきたいと考えています。帝国ホテルという大きな船だからこそ、できることもたくさんありますから。