──では逆に、難しかったことは?

福田:「日本とは化粧習慣がまるで違う点です。日本はスキンケアの売り上げが6割、メーキャップ4割、香り少々ですが、ヨーロッパは5割が香りで残りをスキンケアとメイクが半々。W洗顔もメジャーではなく化粧水も拭き取りに使うのがメイン。だから約40年前、ヨーロッパでSENSAIをスタートした方達は苦労されたと思います。それを欧州のスタイルに合わせる方法もありましたが、私達は良いと信じた日本的スキンケア作法を貫くことを選びました。頑なにではなく、上手にアジャストしながら守るべき信念は貫き、愚直に説明を続けて少しずつ理解していただいています」

小菅:「当社の場合は規模も小さく海外仕様もありません。自分のスタイル、インテリアにどう取り入れるかを自分で考えられる。ただ我々の美意識、価値観を、喜びをもって受け入れられるために、どう伝えるかには苦心しました」

福田:「伝え方は大事です。約40年前、世界から見た日本のイメージはハイテク産業が盛んな工業国。美の本場であるヨーロッパに、名もなきアジアのブランドが乗り込んだのですから、そのままでは通用するわけがありません。私達はまず現地のスタッフの教育に力を 注ぎ、作法、手順、リチュアルがなぜ必要か、そしてメイド・イン・ジャパンのものづくりを長いスパンで理解してもらいました」

期待を裏切らない品質と感性的な心地よさを追求。

[画像のクリックで拡大表示]
両ブランドには、高感度な大人の女性がターゲットという共通点が。1センチの感覚にこだわる女性の感性に寄り添う製品作りを意識。

──製品づくりの、こだわりは?

福田:「一番大切にしているのは安全性。そしてレベルを落とさず、期待値を裏切らない品質です。良いものを作るのはもちろん、長く使っていただきたいので数値には表せない感触や香りなどの心地よさにもこだわっています」

小菅:「家業を継いだ15年前は、まさに“どん底”。生き残るために時代に適応しようとしても伝統工芸のイメージが強すぎて受け入れられず……。2010年にデザイナーの小泉誠さんとコラボしてから風向きが変わりました。僕は、プロデュースが主な仕事。凝り性できれいなものが好きな自分が“これは良い”と自信を持って言えて、説明なしに感覚的に喜んでいただける製品づくりを意識しています」

福田:「勝利の方程式はないけれど、生き残っている商品にはユニークな個性という共通点が。そこにバリューチェーンや人の力が加わってロングセラーになるように思います」

小菅:「結局はどこまで使う人の立場に立てるかだと思うんです。僕は4年前から生け花を習っているのですが、やってみて、公長斎小菅の象徴でもある伝統的な花かごに使いにくい点があることに気づき、1センチで反応が変わる女性の感覚にも敏感でいなければと」

──この先、目指したいのは?

小菅:「日本人の生活に深く根づく竹は、100年前のかごもいい状態で残っているほど、強度があり経年変化で味わい深くなる、世界的に見てもユニークな素材。職人さんが減る一方という伝統産業の難しさはありますが、今の目標はとにかく竹産業をメジャーにすること。日本の美しい民族衣装である和装をイメージしつつもモダンな竹かごバッグなど、今の気分に合う製品をプロデュースしブランドとしての認知度を上げながら、新しい価値を創造したい」

福田:「日本の繊細な美意識をどう発信するか。西洋的なラグジュアリーとは一線を画す、ジャパニーズラグジュアリーの削ぎ落とした静的な美と、イノベーティブな先端科学の融合。肌を磨き上げるのはもちろんですが、気持ちが満たされて生活の質まで向上するような内面的な美しさにも寄り添えるブランドでありたいです」

カネボウ化粧品
TEL:0120-518-520

SENSAI公式サイト

Photos:Daisuke Yamada(Portrait)、 Toshimasa Ohara(aosora/Still) Text:Eri kataoka Edit: Kaori Takagiwa、Mizuho Yonekawa Coopration:The Strings By Intercontinental Tokyo

関連記事

大阪城を一望したガラ・ディナー 豪華シェフによるスペシャルな饗宴