第10回「料理マスターズ」の受賞者の功績と思い

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第10回「料理マスターズ」でシルバー賞を受賞した、熊本県熊本市のイタリア料理「リストランテ・ミヤモト」宮本けんしん氏。

 今回、シルバー賞とブロンズ賞を受賞したそれぞれ1人の料理人に注目し、その功績や料理人としての思いを紹介する。

 2011年にブロンズ賞を受賞し、今年度シルバー賞を受賞した「リストランテ・ミヤモト」の宮本けんしん氏。2006年に「リストランテ・ミヤモト」を開業。「地域と密着したつながり」を大事にすることをモットーとし、熊本の魅力を伝えることに注力。生産者や東海大とも連携し、阿蘇の「あか牛」の価値向上にも努めている。自店で腕を振るうほか、阿蘇の世界農業遺産認定運動やミラノ万博での日本館サポーターとしての活動によっても、多くの人々に影響を与えた。また2016年に発生した熊本地震においては、自らも被災者であったが、被災者が集まる集落で炊き出しを行い、復興を支えてきた。

 受賞にあたり、宮本氏は次のようにコメントした。「地方で地道にやっていますが、『料理マスターズ』を受賞したことで元気をもらっています。熊本地震では全壊一歩手前の状況でしたが、そんな緊急時こそ、美味しい料理を作って食べてもらうことや、農家さん、料理人さんとのつながりの大切さを考えさせられました。また、ブロンズ賞を受賞した当時は25軒だった農家さんとの付き合いも現在では45軒に増え、そういった点でも意義のあるものだと感じました」。宮本氏が営む「リストランテ・ミヤモト」は、来年末で一度店を閉め、再来年のニューオープンに向け準備を進めていくという。

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第10回「料理マスターズ」でブロンズ賞を受賞した、東京都渋谷区のジビエ・肉料理「ELEZO HOUSE」佐々木章太氏(右)。

 今回、最年少で受賞したのは、渋谷区松濤にレストランを構える「ELEZO HOUSE(エレゾハウス)」佐々木章太氏。2005年に北海道・十勝にELEZO社を創業し、「生産狩猟」、「枝肉熟成流通」、「シャルキュトリ製造」、「レストラン」の4部門で一貫生産管理体制を構築している。理想的な料理を提供するための「自社一貫型生産管理体制A to Zモデル」として、全国でも他に類をみないスタイルだ。2016年には紹介制レストラン「ELEZO HOUSE」をオープンし、7席のカウンターのみでゲストを迎え、料理と共にELEZOの神髄を伝えている。2019年春には農林水産省「鳥獣対策優良活動表彰」で「農村振興局長賞(捕獲鳥獣利活用部門(団体))」を受賞。

 受賞した佐々木氏は、「今からおよそ15年前、地元に戻り、鹿肉の美味しさに感銘を受けたのと同時に、食肉の歴史を勉強し、その差別的な文化背景に衝撃を受けました。そこからきちんとした職業として評価されるようにしたいとELEZO社を創業。現在、狩猟では、蝦夷鹿(エゾシカ)、羆(ヒグマ)、兎(ウサギ)、時に蝦夷雷鳥(エゾライチョウ)、生産では、数種の豚、鶏、青首鴨のほか、北海道大学と連携して短角牛を手掛けています。ハンターを社員として雇用したことは日本初で、狩猟にあたっては蝦夷鹿ならば基本4歳までのメスと3歳までのオスのみで、ネックとヘッドしか狙わないルールを設け、ジビエの価値を上げることに成功しました。大切なスタッフと共に、自然界や命と真剣に向き合い、質の高い食材や料理を生み出すことを軸としてきたことで、受賞できたことをうれしく思います」と語る。

 食やレストランにおいて様々なコンテストや評価があるなかで、「料理マスターズ」のように、料理が完成するまでの背景をきちんと理解することは、食文化を理解する意味でも価値あることだ。ぜひ今後、レストランを選ぶ際に参考にしてみてはいかがだろうか。

Photos:Shinsuke Matsukawa Text:Yui Togawa Edit:Mizuho Yonekawa