希代のイメージメーカー、ジャン=ポール グードの展覧会が、銀座のイベントスペース「シャネル・ネクサス・ホール」で開催中だ。ここでは、その見どころをナビゲート。会期は12月25日(火)までなので、急いで!

ココ・シャネルの慧眼を受け継ぐ、美しき共犯関係

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© CHANEL

 シャネル・ネクサス・ホールで開催中のジャン=ポール グードの展覧会は、多彩なイメージが躍動するラビリンスだ。アート・ディレクター、写真家、デザイナー、映像ディレクターなど多岐にわたる「イメージメーカー」である彼が、これまで世に送り続けてきたアートの集大成といえるだろう。
 導入部では、世界初の試みとなる、若いころから現在に至るまでのドローイングの展示が出迎える。ここでは女性の身体のフォルムへの客観的な洞察と豊かなエモーションが、常にグードのモチベーションのひとつであったことが明かされる。
 展示室に入ってすぐ正面のマルチスクリーンでは膨大な情報量の映像が展開され、まさにイメージの奔流だ。往年のハリウッド映画やミュージカル、アフリカやアジアの民族舞踊などのシーンに、グードの創造性のルーツともいえる重要なエレメントがちりばめられている。10代のころ、ミュージカルの世界に進むことを夢見たグードにとって、ダンスや音楽、オペラといった舞台芸術は常にインスピレーションの源泉だった。

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 劇場的な手法によるアート・ディレクションは、グードのさまざまな作品において発揮されてきた。なかでもシャネルとの長年にわたるコラボレーションの端緒となった、男性用フレグランス「エゴイスト」の広告はその象徴である。舞台はリヴィエラの高名なホテルの外観を模して造られた建造物。すべての窓の鎧戸がリズミカルに開き、女たちがバルコニーに現れて口々に「エゴイスト!」と叫ぶ。プロコフィエフのバレエ音楽『ロメオとジュリエット』のなかの「騎士たちの踊り」をバックに、不満の声がポリフォニーを奏でる映像はまるでオペラの一場面のようだ。
 「僕のアーティスティックな発想を初めて実現してくれたのがシャネルだった」とグードは振り返る。アーティストの才能を信じて、自由な創作活動を後押ししたココ・シャネルから受け継がれた“ピグマリオン”の精神が、時代の寵児であったグードの芸術的才能を開花させたのだ。