理論物理学の博士号をもち、有名進学予備校で数学の講師を務める一方、自ら主宰するソムリエスクールで教鞭を執るほか、飲食店経営やワインと日本酒の輸出入業も行うなど、ユニークかつパワフルに活動するワイン研究家、杉山明日香さん。本連載では、彼女が毎月視察に訪れるというシャンパーニュ地方の新潮流にフォーカス。

ブルゴーニュで学んだ精神を、シャンパーニュ造りに活かす

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夕日を浴びて黄金色に広がるシャルドネの畑の斜面。

 みなさん、こんにちは! 「杉山明日香のシャンパーニュ紀行」第5回の訪問先は、シャンパーニュ地方北部にあるモンターニュ・ド・ランス地区、グラン・クリュのアンボネ村に拠点をおく「ドメーヌ・エグリ・ウーリエ」です。2008年にレコルタン・マニュピュラン(=RM、家族経営の小規模生産者)として初めて、『クラスマン』(現『レ・メイユール・ヴァン・ド・フランス』)というフランスのワイン専門誌の格付けで最高位の3つ星を獲得したドメーヌ(現在RMで3つ星をもらっているのはわずか3軒のみ!)です。シャンパーニュの中心地ランスからは車で30分ほど。秋も深まった11月下旬に、現当主のフランシス・エグリさんにお話をお伺いしました。

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手前のシャルドネの畑では、まだ葉が樹上に残る。奥に広がるピノ・ノワールの畑にはもう葉がない。

明日香:(畑にて)寒い! でも、キンと冷えた感じも気持ちがいいです。そして、全体的に枯れた印象の畑に黄色い葉が落ちている様子も、また美しいですね。さっそくですが、フランシスさんの畑のことを教えてください。

フランシス:ここは、コート・ディ・エーブルという名の畑です。ここではシャルドネを栽培していて、約2ヘクタールあります。我々の畑は全体で17ヘクタールあって、そのうち10ヘクタールがグラン・クリュのピノ・ノワールです。この先のビソイユという畑は新しく買ったもので、そちらもシャルドネをメインに育てています。

明日香:そもそも、シャンパーニュで新しい畑って、簡単に買えるものなんですか?

フランシス:買えますよ(笑)。私の曽祖父がドメーヌを始めた当初は、決して大きな土地ではなかったのですが、その後、新しい畑を買えるチャンスがあれば買っていって、いまに至ります。土地と出合うきっかけはいろいろで、親類から話をもらったりもします。
 新しい畑を買い足したいと思っているドメーヌはそんなに多くなく、すでに持っている畑で十分という人のほうが多いようです。私の場合は、将来子どもたちが仕事を継ぐことがあれば、畑は多いほうがいいと考えて、購入しました。将来のことは、もちろん彼ら自身が決めることですが、何かをやりたいというときの財産として残したい、という思いもありましたね。