理論物理学の博士号をもち、有名進学予備校で数学の講師を務める一方、自ら主宰するソムリエスクールで教鞭を執るほか、飲食店経営やワインと日本酒の輸出入業も行うなど、ユニークかつパワフルに活動するワイン研究家、杉山明日香さん。本連載では、彼女が毎月視察に訪れるというシャンパーニュ地方の新潮流にフォーカス。

いちばん必要なのは、確固たるビジョンをもつこと

[画像のクリックで拡大表示]
地下のカーヴには今年仕込んだばかりのベースワインが熟成中。

 第5回のインタビューは、最高峰のピノ・ノワールを生み出す土壌として名高い、モンターニュ・ド・ランス地区のグラン・クリュであるアンボネ村を拠点とする、「ドメーヌ・エグリ・ウーリエ」。後編では、4代目当主のフランシスさんのカーヴでのお話に続き、将来5代目となる息子さんも参加されたテイスティングの模様をお伝えします!

[画像のクリックで拡大表示]
マロラクティック発酵により生成した炭酸ガスの、コポコポと弾ける音が聞こえる。

明日香:(地下のカーヴにて)ブルゴーニュの造り手、ドミニク・ローランさんに師事されたとおっしゃっていました。やはり、ここにあるすべてのオーク樽はブルゴーニュの樽なんですか?

フランシス:そのとおりです。実は、ドミニクは樽屋さんもやっているんですよ(笑)。だから、すべて彼の樽を使っています。彼とは一緒に実験しながら、僕のワインの味わいに合う樽作りを完成させました。

明日香:さすが、フランシスさん! 樽にまでも、研究好きが表れてますね。樽はいくつくらいあるんですか?

フランシス:250個あります。グラン・クリュのブドウからのワインは、基本的に樽で発酵、熟成させています。バランスを考え、新樽の割合は15%ほどです。

明日香:2018年のブドウはかなり豊作だったようですが、樽は足りるのでしょうか?

フランシス:今年は本当に豊作だったので、正直、樽が足りません(笑)。うれしい悲鳴ですね! なので、グラン・クリュの中でも本当にポテンシャルの高いものに樽を使って、それ以外のものはグラン・クリュであってもステンレスを使っています。