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ナイフを使って空気を入れ、型からプリンを取り出す。卵黄が多めのプリンは固めるのが難しく、1時間程度かけて蒸し焼きにする。オーブンから出すタイミングを間違えると絶妙な固さにならないため、時間管理が肝。
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伝統のアイスクリームは、コクがありながらもさらりとした味わい。低い温度に保たれた厨房奥の通称「アイスクリーム部屋」で、機械や材料の調節を行いながら作られる。限られた人間しか入れない部屋で、長ければ1日がかりの作業になるというから重労働だ。

 主役を引き立てるフルーツも、一つひとつが美味しい。自然な味わいのベリー類に、適度に酸味のあるオレンジ、さっぱりとしたメロン。どれもきちんと輪郭のある、さわやかな甘みが特徴だ。「プリンの名脇役となるような甘みのフルーツ、品種をセレクトしています」(橋本さん)。

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メロンは静岡県袋井地区産の「クラウンメロン」。イチゴは、6~11月は契約農家で採れた「恋姫」、それ以外はシーズンごとに美味しい品種を選んでいる。

 橋本さんは、入社した30年前から資生堂パーラーのプリン・ア・ラ・モードを作り続けている。その間、器の変更はあったものの、味わいが変わったことはなかった。「素朴でシンプルだけれど、安心感のある本物の味。それが、私たちの伝統のプリンなのだと思っています」(橋本さん)。

 ただし橋本さんは、この先もただ伝統を守り続ければいいとだけ考えているわけではないようだ。

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1階エントランス横に飾られたオブジェでも「伝統と継承」を表現。改装のために取り壊された石材、木材などを改めてパーツとして使用。

 2019年11月、「伝統と継承」をコンセプトにリニューアルした資生堂パーラーでは、1カ月限定メニューのなかで、ある試みを行っている。異なる牛乳を使い、同じレシピで作ったアイスクリームをメニューに加えることにしたのだ。驚くことに、牛乳を変えただけで、まったく違う味わいになったという。

「今までは、伝統の味を変えずに守ることが伝統であり、継承であるとされてきました。しかしこれからは、もう一歩踏み込み、新しい素材と向き合うことも必要なのではないかと考えたのです。アイスクリーム同様、新しく資生堂パーラーらしいプリンを作ってみる機会も持ちたいと思っています」(橋本さん)

 銀座の街で、新しい美を発信し続けてきた資生堂。日本一ハイカラな街の中心で、117年前と同様に愛される資生堂パーラーは、食というアートを更新し続けていくに違いない。

資生堂パーラー 銀座本店サロン・ド・カフェ
住所:東京都中央区銀座8-8-3 東京銀座資生堂ビル3F
TEL:03-5537-6231(予約不可)
営業時間:火~土=11:00~21:00 (L.O.20:30)/日・祝=11:00~20:00 (L.O.19:30)
定休日::月(祝は営業)、年末年始
ホームページ:https://parlour.shiseido.co.jp/
※価格はすべて税込み

Photos:Kazushige Mori Text:Yue Arima Edit:Ayaha Yaguchi

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