「資生堂アイスクリームパーラー」が開店した1928年のメニューを見てみると、1行目に「資生堂アイスクリーム」の文字がある。注目したいのは、「ア、ラ、モード」の記述だ。「パイ、スポンヂ、プデイング」によって構成されるデザートで、ほかと比べてやや価格が高い。もしかすると、これがプリン・ア・ラ・モードの先祖のようなメニューなのかもしれない。

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「カスタード プデング」の文字がはっきりと記された資料は、1959年(昭和34年)のメニューが最古。

「アイスクリーム同様、プリンもまた古くからのレシピを踏襲した大切な伝統メニューです。卵、牛乳、砂糖、エッセンスというシンプルな素材を使い、変わらぬ本物の美味しさを目指し続けてきました」(銀座本店サロン・ド・カフェ飲料長の橋本和久さん)

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「プリン・ア・ラ・モード」(単品=¥1,500、ドリンクセット=¥2,100、いずれも税込み)。伝統のアイスクリームも添えられている。

モダン都市で生まれたアーティスティックで伝統的な一皿

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かつては高さのあるガラス皿で提供されていたが、東京銀座資生堂ビルができた2001年からガラスの平皿が用いられるように。

 これを芸術と呼ばずして、なんと呼ぼうか。食とはアートであり、最大の娯楽なのだと再認識させられるような、圧倒的な美しさ。

 波打つカラメルのライン、プリンとアイスクリームのたおやかな曲面、果実の凹凸。その表面で異なる反射を見せる光は、それぞれの色とフォルムを鮮やかに浮かび上がらせる。一方で、ガラス皿の奥にまで沈むやわらかな翳(かげ)りが生むのは、静かな品格だ。

 伝統のプリンにスプーンを入れると、しっかりとした弾力がある。だが口に入れると、舌触りはとてもなめらか。プリンはきちんと甘く、カラメルソースはきちんと苦い。雑味がないからこそ調和しあい、まさに美味だ。長く残るカラメルの苦みで、さらにプリンを口に運びたくなる。長く愛されてきたであろう、甘やかな循環がここにはある。

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プリン・ア・ラ・モード作りの工程は、カラメルソースを敷くことから。透明なガラス皿に琥珀の美しいラインが描かれていく。仕上がった線描に納得がいかないときは次の工程に進まず、新しい皿でやり直す。

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