ふと天井を見上げると、そこには柔らかな色彩で表現された鳩のステンドグラスが。鳥をこよなく愛した伯爵の館には、ステンドグラスや内装の装飾にたびたび小鳥と葡萄が現れる。葡萄やつるは子孫繁栄を意味するモチーフ。探訪の際に探してみるのもおすすめだ。

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アーチ型のガラス扉がゲストを優しく迎える。
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〈左〉当時の写真をもとにイタリアで復元された天井のステンドグラス。〈右〉エントランスを入ってすぐにある女性用化粧室は、かつて談話室として使われていたそう。

 チークの壁が重厚な食堂は、中央のマホガニーのテーブルのみ当時のまま。5男6女に恵まれた伯爵夫妻が家族で囲んだテーブルは、お正月など特別な行事で主に使われたといわれている。続く間は客間(ラウンジ)。ここでの見どころは、日本のステンドグラス黎明期の作家、小川三知(おがわ・さんち)がデザインしたステンドグラス。小花が吹き寄せられたようなオリジナルデザインの作品は、一見の価値ありだ。また、葡萄などの果実の彫刻をあしらった柱頭装飾も愛らしい魅力を振りまいている。

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〈左〉客間の両開き窓に施された清楚なステンドグラスは、余白を生かし借景を考慮した小川三知ならではの作品。〈右〉天井が高い客間を見上げると、葡萄などの果実がこぼれ落ちそうな柱頭の彫刻が目をひく。

小笠原伯爵邸のハイライト、イスラム風シガールーム

 そして、ユリアさんが「小笠原伯爵邸の中で一番好きな場所」というシガールームへ。イスラム風の華麗な装飾に圧倒される空間は、この館のハイライト。大理石の柱や床も往時のままだ。ヨーロッパのたばこや葉巻がトルコやエジプトから入ってきたという説があることから、当時は喫煙室をイスラム風にするのが流行していたそうで、昔は女人禁制でもあった。

「食事のあとにこんな素敵な部屋でシガーを嗜むなんて憧れてしまいますね」

 細部にまで技巧をこらした装飾美が堪能できるシガールームは、必ず訪れてほしい場所だ。

小笠原伯爵邸の最大の見どころであるシガールーム。イスラム風の装飾は圧巻だ。窓から差し込む光も神々しく感じられる。
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