外壁や中庭、細部に至るまで芸術への愛が宿る

 各部屋を見たあとは、中庭など屋外へ出てみよう。中庭には屋上庭園につながる外階段があり、小笠原伯爵自らが制作した彫刻の噴水が花のアーチとともに飾られている。彫刻家の朝倉文夫に師事した経歴を持つ伯爵らしい思い入れだ。建物の中央に中庭を配置することは、スパニッシュ様式の特徴。また、正面玄関のちょうど反対側に位置する外壁には、陶芸家の小森忍が手がけた装飾タイルが華やかなムードへ誘う。「生命の賛歌」をモチーフにしたといわれるタイルにも、やはり葡萄やつるが。なんともポップで愛らしいタイルに心和む。丸くせり出した外壁の隅には、曾禰中條建築事務所の定礎銘板がある。滅多に定礎を残さなかったといわれる彼らにとって、この邸宅は特別な存在だったことがうかがえる。

輝く太陽と花々がちりばめられた外壁タイル。使用されているタイルは約1600パーツもあるという。
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〈左〉イギリス留学の経験があり、西洋芸術への造詣が深かった小笠原伯爵の芸術愛を表すかのような中庭の彫刻。〈右〉陶板製の定礎銘板。建築家、曾禰達蔵はジョサイア・コンドルの弟子として数多くの名建築を残した。
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その他の見どころをピックアップ。〈左〉かつてはトイレだった部屋のドア横には、当時の壁を保存したものが飾られている。〈右〉破損せず残っていた照明器具。ランプシェードには小笠原家の表紋(三階菱)が刻まれている。
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小笠原伯爵邸
 
住所:東京都新宿区河田町10-10
TEL:03-3359-5830
ホームページ:http://www.ogasawaratei.com/
レストランの営業時間:11:30〜15:00(ランチ)/18:00〜23:00(ディナー)
定休日:なし(年末年始を除く)/予約制

Navigator:Mademoiselle YULIA Photos & Movie:Hiro Nagoya Text:Mika Koyanagi


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